五番:結果
白い。起きた
口の中も血の
少しずつ体中の
「……っ、勝敗は!?」
最後の意識は
白いシャツが
「お前の勝ちだ」
閉じられていたカーテンが動いて、真琴のブレザーを片手に
遮音は真琴のブレザーをベッドの上に放り投げ、近くにあった丸
「
「あ、う……チャットやSNSって?」
十余年、電子カードの存在すら知らなかった真琴にとって未知の単語。しかし世間では常識となったネットサービスを問われ、遮音は
簡潔にネット上の交流広場と
「そうだ、
「顔面
言外に真琴の
弾速で
遮音が冷静なまま右拳の骨が
「……まだ、実感が
「
「え、ええ!? って、見ててくれたの!? 全然気づかなかった」
「言っただろう。お前が勝つ方に賭ける、と」
無表情のまま流すように言葉を出す遮音。しかし真琴は心の底から
だが一人称を変えたという部分はそうだったかなと
それでも「怒るべき」という点はよく覚えていた。ずっと胸の
実流から始まる全てに対し、困ったり、笑いで
しかし戦いながらわかった。怒ることは決して良い感情ではない。それでも立ち上がって戦うには不可欠だった。
それでも真琴は
思いっきり馬鹿にされた上に吹き飛ばされた痛みは今も体に
良い奴ではないと思う。イジメられたことは当分は忘れないと断言できる。もしかして一生忘れないかもしれない。それでも心底悪いとは思えなくなってしまった。
「それにしても半月程度イジメられたくらいで武力行使というのも情けないな。世の中には三年間
遮音の手痛い一言に真琴はなにも言い返せなかった。代わりにどうして三年間も我慢する事態に
他の学校に
それでもイジメは存在する。暴力
だから我慢するしかない。時折我慢できずに自殺する者もいる。世界大戦前の日本でも問題視されたが、有効な解決方法が見つからない事態だった。
たまたまアミティエ学園には戦うための力である能力保有プレートと、武器なしで戦える決闘というシステムがあっただけだ。その点で言えば真琴は幸運だった。
「ちなみに普通の学校で
「いや、うん。言葉も十分武器だと思うよ」
言葉は文字だけの存在ではない。
心が縮んでしまえば体も動かなくなってしまう。空気が
演説で
「では
同じ言葉なのに、それは武器ではなかった。
今も体中が痛いし、
「ただしお前は戦った責務を負うべきだと俺は考える。その結果だ」
そう言って遮音は自身が持つ電子学生証を操作し、
雑音が
その声に真琴は覚えがあった。実流と
『マジ実流弱っ! おかげで賭けに負けちまったじゃねぇか。今度はアイツを標的に遊ぶか』
『そうだなー、まさかスメラギがあんなに強いとか予想外だし?
『しかし実流の顔見たかよ? 本気で
『いいじゃん! そんでさアイツのプレート
溜息をついた遮音は当たり前の結果だと告げる。真琴は勝ち、実流は負けた。試合を見ていた全員の前で力の差を示した。
起こるのは必然的な標的
しかし真琴はその流れを知らない。高等部から学校に通い始めた身として、イジメすらも体験したばかりだ。まるでシステム通りに動くプログラムを見ているようで、気持ちが悪くなる。
自分のために戦った。その結果、今度は実流が
遮音は変わらない表情のまま仕方ないことだと言う。それは真琴が戦う前からこの結果が待っていることを知っていたと言っているようなものだ。
「知って、たの? 僕が勝っても、負けても……イジメはなくならないって」
「ああ。そういうものだからな。そして解決方法も変わらない。
決闘を使うと決めた際、遮音は口ごもっていた。ようやくその理由がわかった真琴は、大いに
今度は実流が自分の力で対抗するしかない。まるで
この流れを作ったのは
「この音声も恩人に
「そんな……僕はただ、イジメが終わればいいって、
「戦う、とはこういうことだ。それでもお前は進まなきゃいけない。
歯を食いしばる。力を入れたせいで体が痛むが、気にしていられない。真琴は今、実流を
戦ったことは
きっと
「鬼を倒す鬼になれ。この言葉の意味を三年かけて味わうのが、この学校だ。ついてこれるか?」
「……もちろん。じゃないと実流と戦った意味がなくなる。それは実流にも失礼なことだ」
真琴の力強い言葉に遮音は軽く笑う。誠実なようでどこか気弱。それなのに変なところで
育ちが良さそうな外見に反した武術を身に着けている。しかも本格的な武術であり、学校に通っている同い年の少年も顔負けの強さ。
赤い目が輝く。その目の価値は非常に高いのだが、真琴は一切気にしていない。ただし見ている側からすれば恐ろしさを感じるほどの
「それで命を賭けるに値する友情は見つけられそうか?」
「それは……わからない。でも
一度は見えかけた友情の形を見失い、スタート地点に
まだ一年の四月。これからもっと多くの人と出会っていく。その中に一つでもあればいいと思うほど、難しい物だ。
だからこそ命を賭けて探したいと思う。ようやく父親代わりに自分を育ててくれた
「とりあえず……友達にならない?」
「無理だ。俺も友達がいない。友情などわからん」
少し気まずそうにしつつも勇気出して伝えた言葉。返ってきた内容に真琴は石化したかのように思考が動かなかった。
遮音にも友達がいない。友情がわからない。こんなにも自分に助言してくれた相手でさえ、
改めて自分はとんでもない物を探そうとしているのではないかと、真琴は
「だがお前に賭けたおかげで
「いいの!? じゃ、じゃあファーストフード食べてみたい! ハンバーガーって一度も食べたことないんだ!」
「さり気なくブルジョワ発言したことは流してやる。しかし安い奴」
「いいじゃん! 最近は一人
痛みすらも忘れる楽しさで真琴は笑う。遮音とは友達になったという感覚と事実もないまま、休日の話で盛り上がる。
無意識に遮音に対して
それを保健室の外で様子を見に来たが中に入れず、声を聞いていた
テレビ電話機能が付いたパソコンを前に
画面に映っているのは梁よりも年老いた外見の男性だが、
「というわけで、遮音は
『運命だったら仕組まれた物だな。しかし全てはあの子
「
どこか
世界の救世主と呼ばれる
「しかし遮音が、ねぇ。拾った時は誰も信じない目をしていた
『親は
「厳しいですね。さすが実妹の
『その
源藏の最後の言葉にさすがの梁も盛大に反応した。何故か悪人に見られがちな善人は、大きく落ち込む。
しかし全ては口調と
椅子に深く体を
「次はGW、五月には学年別交流会に中間試験……学生は
そう言って梁はカレンダーを
命を賭けるに値する友情。それを探すに
真実の愛よりも難しいそれを、誰が見つけるか。これは友を持つ全ての者に
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