四番:決闘
東側の入場口には青い
解説席に
「これより、スメラギ・
万桜が笛を鳴らすと同時に
アミティエ学園は男子校であるため、観覧席に女子の姿はない。それが逆に暑苦しいほどの熱気を生み、
観覧席に照明の光は
対面する実流は
整えられた
「もう
早口のカウントダウンにも動じず、真琴は実流へ向かって
解説席にいる夕鶴も真琴の身のこなしに
「スメラギ様、いや、隊長の
『
矢吹が目を細めると同時に実流がポケットから手を出す。その手の中には銀色に光るプレート。能力名は【
そのプレートを指先一つで飛ばす。真琴は
能力はプレートを持ち主であると
だがこれで弾数は
弾として
触れられるならば、自分自身も、相手も弾速で飛ばすことができる。
決闘場は観覧席よりも少し
またもや弾速で
予想以上に実流は能力を使いこなし、なおかつ
『矢吹
『
夕鶴が
弾速でプレートや真琴を飛ばした際にできた瓦礫。それすらも弾として吹き飛ばせる。真琴は口の中でなにかを
案外上手に避けることに対し、実流は舌打ちする。万物、あらゆる物を
真琴の赤い目が油断なく実流の手元に集中する。もしも弾として飛ばすならば触れて、方向性を追加するなら投げるしかない。そう思っていた。
しかし実流が
片足で
「真琴ぉ、
そう言いながら実流はどんどん増えていく瓦礫を何発も同時に撃ち出す。
真琴は口の中で呟き続ける。使用済みの弾をもう一度撃つには、また触れる必要がある。あらゆる大きさや重さを無視して撃てる。制限はほぼ無い。
少しずつ実流の能力を確かめていき、
撃ち出された瓦礫は壁にぶつかるたびに
空中に固定してしまえば真琴の
もし自身以外も一つ止められるならば、真琴を撃つときに空中で固定してそのままタコ
安全装置に近いのかもしれない。もしも自身の体を
もうこれくらいでいいだろう。そう断定した真琴は
瞬間、真琴は実流の右
殴られた実流は床に打ち付けられながら、すぐに起き上がる。
拳を
審判として注意深く見ていた万桜ですら一体なにが起こったのか
『これが真琴の【
矢吹の説明に観覧席が再度ざわめきを
攻撃しようとすると反撃してくる。しかも相手の攻撃より早く反撃する。カウンターを先手必勝に変えてしまう。順序を逆にする。
因果律に
もしも真琴の拳が一撃必殺の
能力で与えられたのはあくまで反撃を先取るだけのこと。攻撃の威力を上げるわけでも、速度を上げるわけでもない。
問題はそれが避けられるか。攻撃しようとしている間に
つまりは実流が攻撃を続ける間、真琴は何度も反撃してくる。その反撃全てが先手となり、避けることも防御もできない。動揺する実流に真琴が声をかける。
「一撃、いれたよ。さぁ、これからだ。立て、実流」
実流に対して
そして持っていた瓦礫を撃ちだそうとした瞬間、またもや殴られる。今度は胸の上。一瞬で息が
把握できたところで対処できない。攻撃しようとした瞬間、殴られている。どんな強い能力でも、行使する暇がない。
しかし実流は殴った姿勢のまま動き出すのに時間がかかる真琴を見る。赤い目を白黒させて動揺している顔に、笑いかける。
真琴は能力を使い慣れていない。だから本人も使った時、把握に時間を要する。もう一度瓦礫を撃ちだそうとした瞬間、真琴の拳が腹にめり
笑いながらそれを受け止め、実流は腹に拳を突き入れた真琴の
『今のは反撃された瞬間、相手側に生まれる把握に対する空白を利用した反撃の反撃だな。これで予想通り、五分五分になった』
矢吹の説明で何人かが
歯を食いしばってお
『攻撃すれば反撃を先に
そう説明した矢吹の目の前で、実流が瓦礫を投げようとして真琴の拳を
一番骨が
壁からずり落ちた真琴も
万桜が止めようと笛を鳴らそうとした。これ以上は危険と判断し、今の状況で勝敗をつけようとした。
『止めるなっ!!』
真琴と実流。対立しているはずの二人が声を
落ちた笛に見向きもせず、宿敵であるかのようにお互いの顔を
「ここで、勝ち負けを決められてたまっか……
「
一瞬の交差。攻撃しようとした実流の頬に真琴の拳が入る寸前で実流の腕がそれを掴んでいる。攻撃に反撃を先取ろうとして受け止めた結果。
矢吹も説明を入れる暇がなかった。実流が真琴を吹き飛ばそうとする前に反撃で蹴ろうとして、それを足で止める実流。攻撃と反撃と受け止めが続く。
じゃんけんであいこが何度も続くように、至近距離での
「俺はお前が気に食わない。赤い目だとか、スメラギ家だとか、そんなんじゃない。お前自身が気に食わねぇ!!」
「僕もだ。君がイジメてきたとか、原因だとか言うつもりはない。単純明快に、君を倒したくて仕方ない!!」
お互いに
実流が能力を使わずに
額から血が出ても視線を
「お前とはもっと早く会いたかったぜ。能力さえなければ
「僕も君とは早く出会いたかった。その顔を能力なしで変形させる機会を失った」
お互いに笑い、一瞬で離れ、一歩で近付き、交差するように拳を相手の頬に突き入れる。衝撃で同時に
今のは
真琴も
しかしどちらも倒れない。負けない。勝たない。万桜は
先に動いたのは実流だった。汚れたブレザーを
その間に実流は足元にあった際限のない瓦礫を地面に置いたまま撃ちだす。床を走る弾速の瓦礫は
そこへ
呼吸すら
「
呼吸すら
「お前に関わる奴は全員大馬鹿さ。命を賭けるに
何度も弾ける。同時に
「
否定したいのに声が出ない。まず言葉が出てこない。だけれどあと少しでわかる、本当に
それが引きずり出されていく。感情が先に正体を現し、兵隊のように単語が
「お前に賭けた奴は賭け
そう言って大声で笑った実流は勝ちを確信した。万桜は決闘
笛の回数で機械が自動的に終了を受け取り、審判が入力した勝敗が結果となる。そして勝負は目に見えていた。
観覧席からは実流の名前がひたすらコールされ、真琴の名前は一文字もない。
「
だが
横に転がり、右半身に力を入れて立ち上がり始める真琴。その口からは固まった血が吐き出され、額の血も止まりつつあるが大きな傷だ。
「違う。一人だけ、俺を信じてくれた人がいる……俺に勝てと言ってくれた人がいる」
意識が
まさか先程馬鹿にしたことに対して返事するために立ち上がるとは思わなかった。ただそれだけでもう一度痛い目にあいたいと思うなんて馬鹿と言うしかない。
「そりゃあ、お前が勝てば
「それでも……」
彼の本心を真琴は知らない。どうして信じてくれたのか、勝てと言ってくれたのか、こんな自分に賭けると言ったのか。
誠実な友情を知らない、信じ方もわからない。友達の作り方すら困難で、あっさりと裏切られた末に、真琴は
「
初めて価値を
まずは片腕、次に片足。腹に力を入れ、
「だから俺は戦う。お前に勝つまで、戦う……俺自身のために」
「一
そう言って実流は立つのがようやくの真琴に殴りかかった。瞬間、思い出す。攻撃に反撃を先取る能力を。
攻撃系の能力を使わずとも使える、戦闘向きの能力。思い出した実流は
自分ごと真琴を壁に
実流が吹き飛ばされて床に倒れていく最中、朦朧とした意識で真琴は伝えたいことを口にする。
「俺は
ようやくわかった感情。大火のように燃え上がる気持ちが
「全てを諦めるくらいなら、怒って立ち上がるべきだったんだ」
実流が決闘場の床に倒れて動かない。拳を突きだしたまま動かない真琴を背に、万桜が実流に近付いて容態を
すぐ後に場内に
万桜は動かない真琴に手を向けて高らかに宣言する。
「勝者、スメラギ・真琴!!」
一瞬の空白、まばらな拍手、からの大喝采と賭けに負けた
そして野太い真琴コールが頭上に降り注ぐが、本人が一切反応しないまま拳を突きだした姿勢から動かない。少しずつ声が
万桜が真琴の顔を覗き込み、肩を
「立ったまま気絶している。全く、男は馬鹿だな」
その言葉に矢吹も肩を竦め、急いで保健室に
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