炯々
安良巻祐介
溟壕の境に何やら光るものが埋まっていると聞いて出かけて行った山椒兵三人衆、いつもよりも幾らか黒ずんだ水面を仲良く顔並べて覗きこんだところでじゅるんと音を立てて瞬く間に呑みこまれ、脂のような水は飛沫も上げずにただのったりと男三人のでかい図体をその真っ黒に沈めてしまった。
つまるところ、三人とも見に行ったつもりがその実その何だかよくわからない光るものから見られていたというわけで、どうやら蛇獣か擬竜の類だったらしいが検証や証言をしようにも目撃者が皆消えてしまったものだからもうどうしようもなく、ただ水の中に光るものが沈んでいるときは見に行ったりせず知らんふりをすべしという暗黙の掟がその辺りの陣営に新しく一つ出来たばかりであった。
炯々 安良巻祐介 @aramaki88
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