ある種のポエム。漢詩。現代詩。
Un-known
第1話 トラベリング・カーニバル
トラベリング・カーニバルが夕暮れとともに終わり、ピエロは最後の少年、その後ろ姿を見つめながら、本当なら4個までできるはずのジャグリング、故意に一個だけ落として、この田舎とのサヨナラを告げるのサ。
3年ぶりの今回の興行、思いの他、大盛況でプロモーターもにんまり。ピエロは3年ぶり再会した少女が、Ladyになったことに、ついついにっこり。
それでいて、ピエロは人々から馬鹿にされ、嘲笑されて、子供からは尻を蹴飛ばされて。
「この間抜け!」
ってね。
そらそうだ。やることなすこと、荒唐無稽。うまく歩くことすらママならない。ジャグリングなんて以ての外。
バカにされて笑われることを選んだ職業 & 人生なのさ。
なーに、辛くはねえよ。裏で笑われるよりは、表で笑われた方が楽ってね。
愉快に痛快、案外、爽快、な人生。
そんなカーニバルも終わって、日が沈む。
次の街は、ドイツらしい。
ドイツ語は喋れないが、構わない。
やることも全部同じだしね。
仲間たちも旅慣れたモノ、一々、興業が終わるたびに見飽きた連中と顔をあわせて酒なんて滅相もない。
ドイツで黒ビールなら考えるけど。
撤収の段取りは、団長の仕事。
とにかく、今はピエロの店仕舞い。メイクを落とさない。と、いけない。
そうやって、テント裏の一番隅っこで、独り背中を向けて、化粧を落として、一息ついて。
徐々に、ピエロを素顔が浮かび上がる。
0.1。0.01。0.001。0.0001のチックタックの時計のリズム。
やつれた顔に、深いしわ、睡眠不足で目の下のクマ。
めっきり年を取った、疲れた老人のご登場。
さてと、お祭りは終わった訳だ。
狂騒が終われば、祭りの後、希望もついえて、0になる。0とは何か? 空虚なり。空虚=絶望ね。
自分の職業、人生へのやるせなさ。
ここで、ようやく、本音が漏れ出たんだ。中々、見せない、ピエロの事実。老人の痛切。人生の断絶。
バット・マンのJokerは、絶望に耐えきれず発狂した。
何、この老人なら心配無用。
かなりの楽観主義で、絶望は1分も続かないって知っている。
いわば、人生の達人よ。
絶望が終われば、次への再生、祭りの準備に大忙し。おまけに希望がついてくりゃ、めっけもん。
こんなにやりがいのある仕事、人生も中々ないってオトギバナシ。
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