第5話 あの  な味をもう一度

 地球上から鶏を食材とする料理が消えてから数日後。


「またまた次の宇宙人が来たって?――

 どうした? その、浮かない顔をして」

「実は……」

「何を勿体ぶってるのだ。何か問題でもあるのか?」

「今度の異星知的生命体は、カエル星人です」

「な、なんだって――っ!?」

「誰だ、MMRの連中を(以下略)」



 紆余曲折の後、地球上からカエル料理が消えてから――、一年後。


「……今度は何の食材もとい、宇宙人が来たって?

 もう食材に出来る動物なんてこの地球上には居ないぞ」

「今度の異星知的生命体は、その、あの」

「ほら、言ってみ。おじさん、怒らないから」


 ウシ星人の技術で自分より年下になってしまった、見た目が10歳ほどの官房長官に、総理大臣はあやすように訊いた。


「……稲にそっくりなんです」



 紆余曲折の後、地球上から米料理が消えてから――、

 

 更に一年後。


「……今度は何の食材もとい、宇宙人が来たって?

 もう食材に出来る動物も植物なんてこの地球上には居ないぞ」

「今度の異星知的生命体は、その、あの」

「ほら、言ってみ。お父さん、怒らないから」


 若返りに飽きて、23番目に来訪したイカ星人から得られた技術で気まぐれに元の肉体年齢に戻ってた総理大臣はあやすように訊いた。


「……合成淡泊質星人です」



「あら、ひさしぶりね。上着掛けますね。あ、煙草吸うんだよね?

 え、痩せたって? そりゃ栄養分が入った水しか口に出来なくなったからねぇ今の地球。

 うんうん、本当、固形物がみんな駄目になっちゃったのは痛いよねえ。

 これじゃアゴなんてあったって意味無いよね。

 あ、でも、おにいさんのくわえるのにひつようかしら、あっはっはっ。

 まぁダイエットと思えばこれくらい苦でもないし、今の吉原、スマートな泡姫ばかりよ。

 え、何、味ぽんと醤油どっちが好きって?

 そりゃ肉が食べられた時は味ぽん派だったけどね、今は水しか飲めないからどっちも、ねぇ。強いて言えば醤油かな?

 あの醤油が焦げた臭いはもう堪らなくお腹がすくのよね。

 本当、懐かしいわよね。

 ……あら、醤油じゃないそれ?

 いいの、そんなご禁制品持ってて?

 警察に見つかればタダじゃ……、って何それ、バーナー?

 ここで何か焼くの?

 え、何、焼くって、あた」



                    おわりだおわり。

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あの  な味をもう一度 arm1475 @arm1475

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