全部お前が悪い

@jurimari

第1話

昔からそうだ。

欲しいものはだいたい誰かのもので、手に入らないことが多い。

いざ手に入っても本当に必要なのかと考え挙句持ち腐れすることも珍しくない。そんなこと二度三度の話じゃないのに懲りない私はいつも繰り返し、本当に欲しいものを見失い後悔する。「あぁすればよかった」「こうすればよかった」と。

だからこれから書くこの小説は私の私による私の為の見せしめだ。今まで生きてきた事を後悔するがいい。誰が悪い?全部お前が悪いんだ。



私が狂い始めたのはきっと中学のとき。

あの英語の先生と出会ってからだ。

彼は26歳と若くサッカー部の顧問をしていた。そのせいか夏になると肌が甲子園の土のように黒くなる。歳がまだ近いからか生徒から人気のある先生だった。中2の時から学校を休みがちだった私ですら彼の授業はちゃんと受けたくらいだ。

特別何か輝かしいものがあったわけではない。「どんな先生?」と聞かれてもきっと教育実習できた学生みたいな感じと答えるだろう。ずば抜けて顔立ちがいいわけでもなかったし、これと言って本当に何もなかった。

が、私にはすごく魅力的に思えた。

どこの学校でも一度は耳にしたことがあるであろう先生と生徒の禁断の恋の噂。その先生も例外ではなかった。お相手は隣のクラスのバレー部所属のサクラだ。ハッキリした顔立ちにショートカットの少しボーイッシュな雰囲気の女の子。そして私の友達だ。噂を耳にする前から何となくそんな気はしていたが本人に聞いても勿論NOの返答が返ってくるので流してはいたが女子の情報網は甘くない。

毎日更新される情報は噂を明確に変え周りを含めた私の先生とサクラを見る目はどんどん変わっていった。それと同時にサクラと先生はお互いを避けるように行動を始めるもその行動が火に油だったようで他の先生や、違う学年にまで噂は広がった。広がれば広がる程何故か私は先生が気になり、サクラを妬み始めた。

ある日、いつものように先生の英語の授業が終わったとき「先生、時間ができたらでいいから相談にのって欲しいの」と声をかけた。勿論相談なんてない。ただ2人で話がしたかっただけだ。だが、一向に声がかからなかった。きっとサクラが呼べば飛んでくるんだろうと歪んだ妄想を繰り広げながら短気な私は待つことができず放課後、先生を呼び出し理不尽にキレた。

「私のこと忘れてたでしょ。最初から相談にのるつもりなんてなかったくせに」

勿論先生は反論した。

「時間ができたらでいいと言ったのは君だろ?」と。ごもっともです。そうなんです。その通りなんです。が、思春期真っ盛りの中学生の私は強かったんですよ。

「だから私の事は後回しでしょ?呼んだのがサクラだったらすぐかけつけるでしょ?」

はい。言っちゃうんです。心にしまっておくなんて高等技術ができない子だったんです。

「なんでサクラがでるんだよ」

きっと怒りすぎてセーブできなかったんでしょうね…情けない…

「なんで先生が怒ってんの!?先生がこんなに待たせなきゃよかったんじゃないの?」

昔から褒めて伸びる子だったので怒られるのがこれ以上ないくらいに嫌いだったんです…


口論と言うのでさえおこがましいほどのメンヘラもどきを炸裂させた戦いは1時間にも及び結果的に先生の時間をごっそりといただいてしまった。

話し合いの末に先生は私に

「怒ると叱るは違うよ」と教え、言いたい事が言えた私はスッキリした笑顔で帰った。

きっと先生には多大なるストレスをプレゼントしたことであろう…


先生の教えはこれからの私の思考を変えた。

ざっと言うなら知識のない小賢しさとでも言いあらわそうか。ろくに学校へ行ってなかった私が賢いわけがなくどこかで仕入れてきた表面上の理屈っぽさを盾にして話すようなもので、それもちゃんと言えば理屈っぽさと言うよりただの屁理屈だ。それに加え若干の狂気的思考の歯車がはまった。

どう考えても可愛げのないクソガキだ。


それからはサクラと先生のことも私と先生の事も進展はなく無事中学を卒業した。

私は第一志望から定時制の高校に志願し、合格。サクラからも先生からも卒業したのであった。

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