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  •  冒頭から、金魚の姫君に婿として仕える血筋、という設定に、お伽話めいた雰囲気を感じて惹かれました。終戦や昭和というワードに少し驚いてしまったほど、最初は遠い時代や世界の物語のように感じました。登場人物たちの言葉遣いや屋敷の調度や街並みの細やかな書き込みが、セピアがかった世界観を醸していて、金魚鉢のモチーフと相まって水槽の中の箱庭を覗き込むような感覚も覚えました。
     緑の鬱屈めいた思いについて、最初は「乙姫様」を見捨てることへの不満なのかと思っていたのですが、読み進めるうちに、彼女は「乙姫様」の存在を信じていなかったのだな、と解釈しました。大人たちが作り上げた都合の良い物語だと認識していて、大人の都合で役割を押し付けられたり取り上げられたりすることの欺瞞を感じている。古い時代の終わりと共に、兄に託された世界も終わってしまうようにも感じていて、そのことへの後ろめたさや反発なのだ──と解釈しました。
     そんな、少女が現実を知って旅立つお話でも、美しく切ないものであったでしょうが。最後の花嫁御寮で明かされた「真実」が美しくも優しくて、目が熱くなりました。兄や先祖たちが守ってきたものが欺瞞のない真実であったことはもちろん、姫御前たちから祝福をもらえたことが緑にとって何よりの救いであり解放だったのだろうと思います。幸せな花嫁として嫁ぐことができて、本当に良かった、と思いました。
     とても綺麗な物語を堪能させていただきました。ありがとうございました。