53 世界は考えるべき課題で満ち溢れている。
前回、ヤマシタトモコの「裸で外には出られない」の話と、朝井リョウのラジオの話をしました。
「裸で外には出られない」の内容について書くつもりだったのですが、ラジオと僕の服を買う時の事情を長々と書いて、本題にいけませんでした。
という訳で、今回は「裸で外には出られない」の「TAG.06」の話をしたいと思います。
冒頭でイケメンが出てきて、以下のように言います。
「女って なんでそんなに下着なんかに金かけてんの? バカらしくない? てか男は下着なんて見てないし」
「貴様ァ――」
※そのイケメンの胸倉をつかむ、ヤマシタトモコ。
貴様―って思いませんか
思いますよねうんうん
思う思う! そうだそうだ!
ワー!! ワー!!
※そして、イケメンの首をブラジャーで締め付けて(どういう状況だ?)、ヤマシタトモコが以下のように言います。
「好きでブラジャーとかいう枷としか思えぬ拘束衣を着けているとでも思ったか!?
かわいいデザインでもなければやっていけぬわ! そもそも乳が垂れていたり気の抜けまくったデザインだったりしたときに貴様ら男が文句さえ言わなければ…言わなければっ…!!
貴様らは乳持て生まれし者の苦しみを知らずに一方的に乳の良さばかりを搾取して恥を知れ~~~~!!
高いんだよ女の下着はっ!!!」
というのが最初の一ページ目なんです。
文章で書き出すだけで、ハイテンションで面白いって分かるから、ヤマシタトモコは凄い。僕もこういうテンションでエッセイを書きたいと願わないでもないんですよね。
今度、試してみようかな?
いや、それは置いておいて、まさかの女性の下着についての回をピックアップしました。が、別に個人的なエピソードがある訳ではないんです。
単純に知らない世界だな、と思うので、あえて書いてみようという試みです。
ヤマシタトモコのエッセイで一番の主張は多分、「高いんだよ女の下着はっ!!!」の部分だと思うんですよね。で、個人的に女性の下着の値段などを見たことはないんですが、ショッピングモールとかに行くとランジェリーショップって必ずあります。
結構目立つ場所にあったりするので、目のやり場に困ったりします。
話がズレちゃうけど、このランジェリーショップに対する男性の態度、というか、姿勢? って何が正解なんだろ?
教えて、偉い人!
は、良いとして、そういうことを考えていると浮かんだ小説がありました。「贅沢な失恋」という七人の小説家が食事と恋の物語を書いたものが収録されています。
解説は柴門ふみで、いわく
――おもしろいことに、このうち四篇が、年上の家庭のある男性が、若くて美しい女に、おいしい物を食べさせるという設定になっている。食事だけでなく、高価なプレゼントやめくるめく性技といった享楽を、地位も金もある年配の男が、若い女に与え続けるという関係が描かれるのだ。
とのことでした。
あくまで僕の印象ですが、柴門ふみの解説の文章は、この手の年配の男が、若い女に色んなものを与える、不倫関係にうんざりしていて、ディスっている感じがありました。
そして、個人的に「贅沢な失恋」を読んだ僕も、柴門ふみに完全に同意です。その中で印象的なシーンが一つありました。
――イタリア製の深い紺色のシルクの下着、アルマーニのカクテルドレス、シャネルのリゾートバッグ、プラチナと金で出来たブレスレット。広瀬さんはまたも私にレクチャーしてくれる。
「こういうものは、絶対に女は自分で金を出して買っちゃいけないんだよ」
この中に下着が含まれているので、今回思い出したんですが。
「絶対に女は自分で金を出して買っちゃいけない」と言っている以上、これは男の見栄とか、欲情の為に必要なものだって宣言してますよね。周囲の人間に自慢する為に、女性の内面を無視して着飾らせていますよね?
トロフィーワイフ化してるよね?
嫌いだわぁ。
けれど、「贅沢な失恋」が書かれた頃(単行本は1993年出版)は、こういうことが常識だった、あるいは男性の成功モデルとして語られていた、という現実……。
うーん、ひとまずそういう男尊女卑的な常識は流石に言われなくなった現代(と信じたい)において、ヤマシタトモコが言うように(抜粋はしてないけど)自分の好きで楽な下着を身につければ良いと思うんです。
って、そういう風に無関係を装うのも実はダメな気もするんですよね。女性って下着一つとっても大変なんだな、と改めて思ったりします。
カクヨム内のエッセイに、 笛吹ヒサコという方が「正しいブラジャーの、すすめ」なるものを書かれてたりするので、そういうものを読みつつ、理解(?)を深めていきたいと思います、はい。
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