43 職業作家としての戦略。

 たまにはカクヨムの話をしたいと思います。最近、文芸誌を話題にすることが多かったので。

 カクヨムで思わず読んで、オモシレ~ってなったのが一田和樹さんの「新人賞受賞は運=確率! 1年9カ月で投稿96回、受賞2回、最終候補6回!」でした。


 もうタイトル通りですね、というか、これはタイトルで良いのか? と思いますが、新書系で言えば珍しくないのかな?

 なんにしても、おそろしく分かり易いですよね。中身もまぁ分かり易い! 言ってしまえば、タイトル通りですから。


 運=確率を量によって上げていって、賞を取って職業作家を目指す1年9カ月(正確には1年半年らしい)におよぶ投稿時期の戦略やスタンスが書かれていて、個人的に楽しく読みました。

 というか、僕もやってみたい、と思いました。


 一田和樹さんのスタンスはどこか森博嗣に近いものを感じます。森博嗣が「小説家という職業」という本の中で、


 ――とにかく、書くこと、これに尽きる。


 と書きます。これが結論だ、と。

 一田和樹さんのスタンスも言ってしまえば、これでした。その上で、あらゆる賞に送る。


 僕は個人的にこのスタンスが好きではありませんでした。インプットせず、アウトプットさえすれば良いんだ、というスタイル。それは単純に読書量や経験が足りない作者の書く小説が僕個人が好きではないからでした。

 けれど、森博嗣は以下のように書きます。


 ――もし、本気で小説家になりたいのなら、この本さえ読んでいる暇はない。すぐにキーボードの前に座って文章を打つべきである。毎日、時間があったら作品を書こう。本当にこれに尽きる。ブログなんか書いている場合ではない。上手く書けないというなら、20作ほど書いたあとで悩んでもらいたい。


 まるで寺山修司が「書を捨てよ」と、本の中で言っちゃったような矛盾がそこにはあります。ちなみに、一田和樹さんはインプットも同時にしていた、と書かれていました。

 1年9カ月の間、小説の文章を書きながら、本や映画をインプットしていくって、僕からするとバケモノです。


 僕なんて小説を書いていても、横に置いてた漫画(今は「先輩がうざい後輩の話」)とか読んじゃうし、映画を観ていても仕事終わりとかだと途中で寝ちゃったりするし……。

 あ、僕、頑張ってないなぁと実感します。


 言ってしまえば、一田和樹さんの「新人賞受賞は運=確率! 1年9カ月で投稿96回、受賞2回、最終候補6回!」を読んで思ったのは、そういうことでした。

 という訳で、職業作家になる為の戦略を考えてみたんです。

 ただ、その前に僕がどういう小説家になりたいのか、を書かせてください。


 小説家は人殺しを肯定する仕事だ、と言っていた作家がいた気がします。実際、その通りなのかは疑問を差し込む余地は多々あると思いますが、小説は言語化できない感情や体験を形するのに最も適した表現方法であることは間違いありません。

 僕はそういう言語化できない感情や体験を小説にしていきたいと思っています。


 人から見れば僕は「芸術家気取り(笑)」です。

 売れるもの、今の読者にウケるものを研究して……という受験生的な作家志望のあり方を僕は好ましく感じていませんでした。そうやって流行や、今勝っているものに乗ったら、次の瞬間、あるいは遠くない未来に飽きられて負けてしまうのが目に見えているじゃないか、と僕は常々考えていました。

 評論家の佐々木敦がツイッターでこんなことを呟いていました。


 ――みんなこういうのが好きなんでしょ?でも、こんなんやったらウケるだろう、でもなくて、とにかくまずは自分の頭でよくよく考えている、他者からの視線以前に突き詰めた思考がある、という表現を、僕は擁護顕揚していきたい。


 僕の職業作家になる為の戦略ですが、佐々木敦に擁護顕揚されるような表現をしていく(というか、されたい!)。って、それはすでに「他者からの視線」を取り入れているのでは?

 難しいなぁ、職業作家になる為の戦略かぁ。

 とりあえず小説を書きます。戦略が浮かんだら、ここに書いていきたいと思います。

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