37 こびりついた劣等感と三百円のボールペン。

 あけましておめでとうございます。

 と言いつつ、この原稿を書いているのは十二月です。


 年が明けて、僕の2019年の目標とか、2018年のまとめとかを書くべきなんだろうな、とぼんやり考えていました。けれど、それを誰が読みたいんだろう?

 と自分の中でなってしまったので、今回は先日参加した、ライターオフ会みたいなイベントについて書きたいと思います。


 ライターのオフ会で、僕は「ライターになってみたいけど、何から始めて良いか分からない」というスタンスで望みました。その場でも、そういう話をしました。

 メンバーはライター実績のあるベテランの方が一人と、駆け出し(と言いつつ本を出されていたけれど)の方が一人。後は僕のようにライターに興味がある、というのが三人。


 最初に主催者であるベテランの方が「この会はセミナーのようなものではなく、あくまでお茶会でゆるくやっています」と言った。

 実際、具体的なライターになる為の方法論や注意点以外は、僕たちからの質問や読んだ本の話がメインの会でした。僕は終始、主催者のベテランの方の話をメモを取っていました。他の二人も同じようにノートを持っていました。


 僕が持っていったメモ用のノートは2018年の始めに買ったスケジュール帳で、ボールペンは最寄駅の文房具屋さんで買いました。

 ボールペンは三百円して、少し高いとも思いつつ、軽すぎず重すぎない持ちやすさに惹かれて購入しました。部屋で使う百均などで買う大量に入っている中の一本よりも使いやすいな、と感じる中で、僕の質問に主催者の方が答えているのを聞き、ふと思いました。


 僕はもしかすると本当に初めて自分から何かを学びたいと能動的に動いているのではないか?


 僕は小説家になりたくて高校卒業後に専門学校に進学をしました。

 が、それは実家に居るのが嫌で、進学で一人暮らしができるのなら何でもいい、そういう気持ちが強くあってのことでした。

 実際、僕の意識の中では専門学校の授業は高校の延長線上にあって、結局は授業をこなして、言われた通りのことを言われた通りにやっていく。そこに何の疑問も差し込まず、言われた通りのことが出来ないから、自分は劣等生だという自己暗示にかかっていました。

 それは中学、高校時代の僕の中にあったものでした。


 周囲との比較と評価によって、僕の自己暗示は強く深く刺さっていきました。

 僕は中学、高校、専門学校と、それは見事な劣等生でした。

 自分で選んで学びたいと願った小説の学校でさえ、劣等生だったと言うのは我ながら笑える事態です。好きこそ物の上手なれ、と言うことわざがありますが、僕は好きなものでさえ上手にはなれませんでした。


 ある先生には「お前は絶対に作家になれない」と言われました。捏造している疑惑もありますが、少なくとも「教室の中でお前が一番文章が下手くそ」とは言われていました。

 クラスメイトの前で僕の小説が如何にダメか、という公開処刑された覚えもあります。そう考えてみると、今こうして文章を書いたり、小説をアップしていることが不思議な気持ちになってきます。


 どうして僕は小説を書くことを止めなかったんだろう?

 多分、そういう風に劣等感を抱えた状態で書くのを止めると一生、小説や物語と真っ直ぐ向き合えなくなる、という実感だけはあったんだと思います。

 あるいは続けていれば報われると、根拠もなく思っていたのかも知れません。実際、今も小説や文章を書けていられるのは、僕を構成する上で最も大切な部位となっています。


 その延長で、ライターの技術を学ぼうと能動的に動き出せているのは幸せなことです。

 2019年もパソコンの前でキーボードを叩ける幸せを噛み締めつつ、継続は力なりをモットーに頑張っていきたいと思います。

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