⑱ 平成最後のUFOの日。「カク」ヨム。
カクヨムを始めたのは本当に偶然でした。
今も、こうして連載をしているのも特に思想を持ってやっている訳ではありません。なら「小説家になろう」に掲載した方が良いよ、と友人に言われたことがあります。僕は未だに双方の違いを理解している気がしません。
何にしても特別な理由はないのだから、小説家になろうでも問題はないのでしょう。だから、もしかするとこの先で小説家になろうにも作品を連載するかも知れません。
ただ、同じものを連載しても仕方がないので、別のものを書きたいとだけ思います。単純な話。僕が重要視しているのはネットに自分の小説を載せることでした。こうして、自分の思いを載せられる場を作ること。
そこで僕の考えは完結しているとも言えます。
当然、誰かに読んでもらいたくて僕はネットに小説を載せています。けれど、それを操作することは出来ません。僕ではない誰かが、何かの拍子に僕の書く小説と出会ってくれることを願うしか僕にはできません。
いわゆる誤配が起こるのを、じっと待っている状態と言えるかも知れません。
当たり前の話ですが、人間には出来ることと出来ないことの二つがあります。僕に出来ることは小説を書くことと、小説を読んでください、と言うことだけです。
あとは、僕ではない誰かが決めます。
それに僕は一切口出しは出来ません。更に言えば、読んでくれた人が面白いと思ってくれるかどうかとなれば、もはや僕の存在が挟み込む余地などありません。
世の中は僕には出来ないことで溢れ返っています。
仕事をするにしても、恋愛をするにしても、相手に僕を選んでもらう必要がある訳ですから。自分で操作可能なことの少なさに殆ど絶望的な気持ちにさえなります。
そんな僕が操作可能な世界の一つに、小説を書くというのがあります。当然、小説を書き進める上では多くの見えないルールが存在しますし、本当に操作可能な部分はほんの僅かです。
が、小説を書くという行為そのものは、僕が自発的に時間を作り、パソコンの前に座らなければ作られないものです。
僕は僕を操作し、小説を書く理由の一つとして、インターネットに作品を掲載することを選びました。それはカクヨムでも、小説家になろうでも、他のサイトでも問題ではありませんでした。
と言いつつ、実はカクヨムを書いていて良かった、と思うこともありました。それは六月二十四日にありました。その日はUFOの日で、未確認生物や超常現象好きの友人、倉木さとしが記念日と称して作品を毎年送ってきてくれる日でもありました。
今年も送ってきてくれるのかな? と少しワクワクしていたところ、LINEがきました。内容は以下のようなものでした。
――UFOの日にまさかの!
という文面の後にURLが貼りつけられていて、そこをタッチするとカクヨムの「UFOの日:秋山瑞人からのメッセージ」というページに飛びました。
秋山瑞人。「イリヤの空、UFOの夏」の作者です。倉木さとしも僕もイリヤが大好きで学生時代に盛り上がり、今でも語り合うほどに好きな作品です。
その「イリヤの空、UFOの夏」がカクヨムで連載されているのは知っていました。ただ、まさか平成最後のUFOの日に秋山瑞人からのメッセージが掲載されるとは、まったくの予想外でした。
そして、その内容も実に素晴しいものでした。時代に対するノスタルジックな思いからはじまり、自分が書いてきたことの自己言及を終えた後に、
――そして物語は続きます。
と書きます。メッセージを読む限り、秋山瑞人が新しい物語を書くつもりはないようです。少なくとも、「イリヤの空、UFOの夏」のようなノスタルジーをかき立てる作品は。
それは庄司薫が赤白黒青の四作の後、小説を書かなくなった理由と繋がるのではないか、と僕は勝手に思います。つまり、自分が生きた時代の役割は果たした、という自覚。
後は、次の世代が書けば良い、と秋山瑞人は暗に言っている。
――いま書くとしたらどんな話になるんだろう。「飛行機」が突っ込んだ先は園原基地の裏山ではなく遠いアメリカの地の双子のビルでした。
――UFO特番もすっかりご無沙汰となった今、夏休みの最後の日の最後の夜の、ど田舎の中学校のプールには一体何がいるのか。
僕は今、平成最後の夏を生きています。
夏休みも学校のプールも無縁になってしまった二十七歳の男が、遠いアメリカの地の双子のビルやど田舎の中学校のプールにいる何かについて、考えています。
答えらしいものは未だに出はしませんが。
何かしらの答えが出れば、ここに掲載したいと思います。
なにしろここは「カク」ヨムですから(明白なパクリです)。
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