第9話 ハンドボール投げ

 昼休みが終わって午後一の授業は体育だった。私の一番好きな授業だよ。やっぱり体を動かすのが性に合う!


 体育は二クラス合同で行うみたい。私たちE組はA組と合同で体育の授業を受けることになっていた。今日は体力測定をするらしい。お決まりだね!


 出席番号順に整列した私たちは二人一組になって測定をすることになった。私の相方は山田さんだ。


「よろしくね、山田さん!」

「あの、桃井さん。私の名前は山中……」

「あっ! 山田さんの体操服の名前が山中になってる!?」

「やっと、気付いてくれた!?」

「ひどいね。刺繍屋さん。山田さんの字を間違えてる! クレーム入れないとね!」

「ええっ!? なんでそうなるの……」

「山田さんが言いにくかったら、私から言ってあげるから!」

「あの、その、えっと……あ、ありがとう……」



 私たちは早速、体力測定を始める。やっぱりまずはハンドボール投げだよね。ていうか、このグランド凄く広い。あらかじめ測定場所を決められてるけどひとつひとつの測定場所の間が遠いよ。さすがはお嬢様学校。ハンドボールは一番グランドの深い場所だ。一番に着かなくちゃ!


「山田さんダッシュだよ!」

「ええ!? そ、そんなに慌てなくても……。は、早!?」


 私はいの一番にハンドボール投げの測定場所に辿り着くと追いかけて来る山田さんに声をかける。


「ほらほら、山田さん急いで急いで」

「そ、そんなに急がなくてもハンドボールは逃げないよう。というか桃井さん足早すぎ……。ちょっと休憩させて……」


 あ、またやっちゃった。どうにも私は男子と野球していたせいか、せっかちらしい。気をつけなくちゃ。山田さんの息が整ったのを確認して私たちはハンドボール測定を始める。


「さ、まずは山田さんから!」

「う、うん……」


 山田さんが「えい」と声を出しながらハンドボールを投げる。記録10メートル。女子高生の平均が14メートルって先生からもらった紙に書いてるからまあまあだね。


「よーし! 次は私の番だね!」


 山田さんは20メートルくらいの場所で私が投げるのを待っている。だめだめ、私はもっと飛ばすんだから! 私は山田さんにもっとさがるようにジェスチャーする。


「え、ええ!? まださげるの!? さすがに欲張り過ぎだよ。もう35メートルの線も超えて線すら書かれてないのに……」


 山田さんが声を出してるけど離れ過ぎちゃって聞こえないや。私は左手でハンドボールを持つと思いっきり遠投する!


「うりゃあああああああああああああああ!!」

「ええ!?」


 私の投げたボールは山田さんの頭を超えて着地する。うんうん、良い感じだね。これは新記録いったかも?


 メジャーを持ってボールの着地地点を測り終えた山田さんが私の所に戻ってくる。


「よ、48メートル70センチ……だったよ。桃井さん……」

「やったぁ。新記録ぅ! でももうちょっと遠くまで投げれると思うんだ! もう一回投げて良い?」

「あんなに飛ばしてるのに。ま、まだ満足できないの!?」

「あ、ごめんね山田さん。山田さんも満足してないよね。山田さんも投げたいよね?」

「え? いや私は別に満足してないわけじゃ……」


 私と山田さんが話していると、何やら歓声が聞こえてきた。あそこは50メートル走の測定場所? やけに生徒が集まってる。何やってるんだろう? 気になった私はダッシュで人だかりができた場所に向かって走って行った。


「ちょ、ちょっと桃井さん!? 置いてかないで!」

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