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【前書き】
お久しぶりです、学校と就活で立て込んでて全然書いたり読むことが出来なかったです。猛省。今回賞味二千字であんまり進められてないです。
そういえば序章の加筆修正を細々としています。今回は最初の蓮パートの方の追記完了しました、ネタバレすると17歳と37歳の不埒の前哨とかそんな感じです。字面で犯罪っぽいので大丈夫な方のみ推奨です。マツ属の辺りから新規です。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885780447/episodes/1177354054886572166
ともかく次回から4000字行きます…そんでもって他の方のも読むのです…あっ今回ちょっと訳わかんなくても大丈夫です。私も書いててそこまで分かってないです、でも頑張ったです。
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リップから奇怪な玉章、軽快な詠唱をくちさきに。危険だが、当事者であるヨウは下がることもなくそのまま温室に入った。後に発動後に想定した簡単な拘束具を天井に取り付けるや否や召喚は始まった。
風とも言えないささやきは温室に佇むものどもすこし撫でてふるりと震える。最奥は大広間だったが、主人の一存で大胆に仕切りごと打ち抜いて客たる草たちは青々と鎮座する。温室には文句のない広さだが、多く不足する設備は魔法で組み込まれていた。ここでは宝石魔術だろう。ありがちだが、カードよりも厚くペン先の文字よりも濃く魔力を奥深くに刻める強みがある。密度の高さなら、磨かれない石でも可能だが、とりわけ宝石が代替物として用いられた。
上流に蔓延った藁箒どもとしても、宝石という高コストは権威と成る。だがヨウは権威に固執する性ではない、しかし金には糸目をつけない。膨大に必要とする設備の代わりに、効力に応用はなく単一であることに目を瞑れば隠蔽するには最適なすべだ。日光の代わりに屈折率が高く分散させやすいスフェーンと、耐久性と密度の高い金剛石の併用。動物媒を必要とする植物にはデマントイド・ガーネットの爽やかな蜜で送粉者を誘く。その他諸々見通して、費用は馬鹿にはならなそうだが第三者に露見して搾取されるよりかは良いのだろう。
それゆえの晴れやかたる鮮景、四季に埋もれぬ芯を感ずる。既に故郷でもいくつか目にしていた彼らは、緑の翅を延ばして穏やかな部屋の中で生きる。肺臓を病ます砂塵の猛威に襲われはしない。息吹。ただ一人の青年の吹息に応えるために生きている。そんな、穏やかな世界だった。
――詠唱は
ここでも疑り深い性格が治らないのは考え物だが、懸念はない。ヨウはイルディアド家すらも異端とされたのは植物学と魔法の冥合のみと言っていい。無論数多の宝石を綾取るなら相応に水準は超えているが、唱う文は農民ですら聞き覚えがある。
現在一時的に体系化を試みている機関だが、元を辿ればその機関に魔法を広めたのも異世界だ。発祥は強欲国にて反逆罪を問われた第一研究所所長のジャックレイと聞く。当時最新鋭最先端の国営組織からの大罪人と大層な金箔付きだが、彼が広めたにせよあの程度の技術で留まっていた。詠唱の複雑性はそう高くなく、整然とした文法と大部分は約定で占められている。
使用されている言語は色欲国の、宮廷言語。革命により帝政から共和政に代わったが元首の意向で、宮廷言語を旧式として使用していた。現在は新体系の民承言語が実用されているなら宮廷言語を使用する人物は限られる。革命の反動から逆行派は良識であれど古臭い言葉を使えば淘汰されやすい。だがそれでも使用されるとしたらよっぽど記憶力の低い低知能の人外。そしてそれを容認する企業だろう。ヨウがワンフレーズ唱えてしまえばそこまでは推測出来る。
――色欲国か
突如、ヨウの眼前に光が円を描いて発光する。魔法陣、飾った記号絵の縁から文書を読み解くがこれも先鋭ではなく典型だ。場所指定の誤差の排除を大分に費やしたか、その分転送出来るリソースも限られる。だから極力簡易な作りであれば特定もされにくい、対象を粒子レベルまで分解させてから移動させるもの。対象物質の色素や質量等、次元ごとに変動する情報を照合させ量子段階で演算して再構築する。粒子が拡散される前に抑制させる紋を発動者が付ける為、比較的安定した物搬を可能とする。ともかく初歩を少し捻っただけのものを使なら下等、そして共和的政策として福祉的な働きをすれば分かりやすい。分かりやすく、フチの一点にヘッダーとして「国営」の字列を見つけた。
色欲国。大罪国の一つとして強国ではある。だが最も警戒するべき暴食国とは折り合いが悪く、最も背くべき怠惰国は新興国として国交を積極的に行っている程度だ。
国営と記され、ヨウも分かっててしているなら合意の上だ。色欲は現実世界を侵犯するなど宣告はしていないが、先方には先方の理由がある。勿論、目の前の不埒に価値を見出す者はヒヨの周りには特にいる。だが生憎ここにはいない、暴食ぐらいしか良くは知らないぐらいの下っ端だけだ。
ヨウの静まったたけびが喉を震わし、生白い首を見せて喉仏は影を。ビブラートに鳴る吐息は一層も引く。深く、刻んで。ヒヨもそれに注視していたが、その分周りを疎かに自分を眼中の外に追いやっていた。
――もしも
疑念疑心だが、ここにYはいるのだろうか。そう取り留めないあまい哲学を催して背後に回る。それでも彼は反応しない。ほうっと、ぼうっと立っていた。
「――アレ、タイザイだと思わない?」
小さく囁けば、彼の肌は逆立つ。遠目で見たらそうでもないが、近くで見ると小さな傷が肌の下に肉として埋まっている。それがやや項から背にかけてふくらみ、赤らむ。最低な人間だろう、生き様には感心するくせして信奉はしない。ここまできて嘘をつく人間はいる。死にたいと言いながらも死ねない可哀想な嘘つきもいる。それを自分以外にいることは認めたくない。
『じゃあ僕らは共犯だね』
後ろを振り返る彼は、目を細めた。それが正解だと言わんばかりに一層魔法陣の光は強まる。
そしてストロボ。
そのひと時を、魍魎がコントラストに彩るまでの小さな瞬きにて充足を噛み締めた。
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