宮内浩 春 04
夢の中でなら姉に会える。
当時の僕は本気でそう考えていた。
時間の感覚が薄くなった十三日か、十四目の夜、僕は目覚めてリビングに下りた。喉が渇いていた。
電気を点けて、冷蔵庫からお茶を取り出してグラスに注いで飲んだ。
横目に食事をするテーブルが映り、そこに姉が座っているのが分かった。僕を見て姉はニッコリと笑って、テーブルの上で指を動かした。
ピアノを弾くような仕草だった。
「姉さん!」
言うと、その場に姉は居なかった。
リビング中を探しまわったが、やはり姿も形もなかった。ただ姉がテーブルを叩く音だけが耳に残っていた。
――私を探すのなら、夢の中じゃなくて現実にしなさい。
そう言われた気がして僕は眠るのをやめた。
学校にも登校したし、大人の心配の声にもちゃんと答えた。
十日以上もの間、曖昧な夢の中で過ごしたせいか、僕は生活上のあらゆるものに違和感を覚えた。最初の違和感は近所の公園の片隅にあるブランコだった。
そこに誰かがいる気配がした。
けれど、もう一度見すると、その気配は消えていた。
二回目は信号待ちをしている真正面の歩道だった。
瞬きの間に人が映って消えた。
間違いのない違和感だった。
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