腐女子兼夢女子の葛藤

なぎあ

第1冊目 クラス

 4月。それは新生活の始まる月。私…七色菜々緒は都会のど真ん中のビジネス街に呆然と立ち尽くしていた。なぜここにいるかというと、私にも『新生活』が始まるのだ。

 大阪府〇〇市〇〇区。ここに大きく建つのは私の進学先の学校だ。シックな雰囲気にレンガ造りの高層ビル。そもそもこんなに都会にいるというのがものすごく珍しく、周りのビルが高いのがすごく気になる。なんだか空が高い。見渡す限りの青い空のもとにいた高校時代に比べたら、このいまの環境は大きく変わり果てた。

「とりあえず、頑張るしかないか。決めたことだもんね。」

 私は学校のエレベーターに乗り込んでそうつぶやいた。

 今私のいる学校…専門学校は情報系といえば聞こえがいいが、その種類も変わっている。…私の場合、SE(システムエンジニア)ではなく、ゲームプログラマーなどというものになるために勉強する。なので、情報とひとくくりにせず、『情報メディア』というのが正しいだろう。

 教室にて今日からは授業が始まる。クラス自体、いやではないのだが…。問題が一つあったりする。

『おーい。菜々緒、学校ついたか?』

 ふとスマートフォンを見ると画面にはSNSアプリの通知がポップアップで表示されている。

「『着いたよ』っと。」

 このメッセージは高校時代の友人からのものだった。グループには私と高校時代の友人2人がいる。さっきメッセージを送ってきたのはその友人の一人・友紀ゆきだ。こいつのことはまた後日に。返信をすると、エレベータの液晶にちょうど5階と表示されたので慌てて飛び降りた。

「おはよう。」

「おねーさん、おはようさん」

 エレベーターを降りてすぐのところの椅子に腰かけて笑談していたであろう二人の男子学生は私に気づいて笑顔でこちらに挨拶を投げかけてくる。まぁ、両人ともクラスメイトなのだが。

 おねーさんと私に声をかけてきたのは、高校こそ違えど、同じ学科出身の夢宇ゆう。少し体育会系の人間と勘違いしてしまうが、バリバリの理系だ。そして、先に挨拶したのは、プランナーを目指す冴山さえやま。おとなしそうに見えるが案外よくしゃべる。

「あぁ。おはよう」

 私も二人に挨拶を返す。意外と静かと思う学部だが、意外とうるさかった。意外過ぎて少し引いた。

「さぁて、行くか。」

 ぽつりというと私は教室に向けて歩き出した。

 それから早くも数日後。私はそれなりに学部になじんでいた。別に男ばかりだからと言って話が合わないわけでもなく、他学部に友達がいないわけでもないので、楽しく生活を送っていた。

「おはよ、なっちゃん」

「お、おはよう。」

 こちらは、CG学部のいろちゃん。なにかとけらけら常に笑っている感じがする。悪い子じゃないし、よく話すほうだ。

「おはよう~いろはさん、なっちゃん。」

「おはよ、朝日ちゃん」

 彼女は、Webデザイナー学部の朝日ちゃん。この子は見た目おとなしそうなのだが、バンギャ(ヴィジュアルバンドのファン)らしいが、明るく人懐っこく、とにかくいい子だ。

 この2人も高校時代ならきっと会話もしなかったタイプの子。2人とも実はここらへんで一人暮らしをしている。えらいと思う。

「みんな今日はバラバラの教室か…。ま、昼には会えるよね。」

「あぁ」

 新館という、ここ…本館から歩いて10分くらいしたところにある。そこにCG科はよくいる。デッサンの授業らしい。

 それじゃあね、と二人を見送ると、後ろから誰かが私の服のすそを引いている。

「誰で…って、先輩か。」

「先輩か、じゃないぞ。ぼーっとしてんな。」

 こちらは、唯一の女性の先輩で、蒼井先輩。悪い人ではないが、オンとオフの差が激しい。

「蒼井も七色ちゃんもちょっと、邪魔になってるよ」

 あ、ほんとだ。蒼井先輩の後ろに漫画科の人たちが困った顔をしてこちらを見ている。

「ありがとうございます、燐先輩。」

「りんたろーもう少し早く言えよー」

 燐先輩は同じく一個上の学年の先輩でこちらまたはきはきした先輩だ。まぁ、少し天然なのだが。

「燐先輩。なにしてんスか。人のUSB盗んどいて」

「げっバレたか。俺じゃねーよ」

「バレたかとか言ってんじゃないですか!!」

 この怒りながら登場するのはこちら同い年の亮。いじられた体質だ。そしてこれまた嫌われない良い子。自分は悪ぶるけど。

「亮。怒らないの。りんたろーも仲良くなりたいんじゃん」

「は?天邪鬼ですか」

「いいじゃん」

 蒼井先輩のなだめすら聞かない。天邪鬼はどっちだか。

 …まぁ、今日の登場人物はこんなもんだろうか。このほかに数人の先輩や同級生がいるが、とりあえずこんなものだろうか。他の輩…いや、ほかの仲間たちもおいおい紹介していこうと思う。

 こんな感じに生活を送る、腐女子と夢女子の私のお話だ。

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