出してくれ!
石田篤美
出してくれ!
「んっ……?」
気が付くと俺はベッドで眠っていた。
高級なホテルで使われているような、薄いベージュ色のベッド。
生地は柔らくてふかふか。思わず二度寝してしまう……って、いやいや。
「ここどこだよ⁉」
俺はベッドから飛び起きた。
布団はかけられていなかったので、スマートに起きることができた。
いや、そんなことはどうでもいい。
「ここどこだよ⁉」
もう一度叫んだ。本当意味が分からない。
昨日は早めに会社が終わって、飲み会にも誘われたけど録画した深夜アニメ見たいから断って、速攻で家帰って風呂入ってビール飲んで飯食ってアニメ見てソファーで寝てたはずなのに。
「ここどこだよ⁉」
三回目だ。もしかしたらもう一度言うかもしれない。その時はよろしく。
とりあえず現状確認だ。
正方形の部屋を見回すと、ベッドの前には六十インチはあるだろう薄型テレビが置いてあって、左側にはカウンターキッチン、その隣にはトイレがあった。ちなみにウォシュレット付きの洋式トイレだ。
見たところ置いてあるものはみな最高級のものばかりのようだ。
しかし、重要なのは……、そこではない! ああっ!
この部屋にはなぜか出入り口がないのだ。
あちこちくまなく探したが、ドアらしきものはトイレ以外ないし、穴なんかもない。
一応ベッドの右側に窓らしきものがあるけど……。一応脱出できるか調べてみるか。
黄緑色のカーテンを開けると、そこに広がっていたのは、青い空と白い雲。
黄色い砂浜、きらきらと輝く海。照り付ける太陽! 踊る人々! 美しい南国のリゾート……。
「の、絵じゃん!」
窓なんかじゃなかった。何なんだこの絵は。
人間の表情まで一人一人細かく描かれていて、リアルすぎて引くわ!
しかし、こうなるといよいよやばい。
この部屋が完全に密室であることが証明されたからである。
「いやだ……。こんなわけわからんところで一人ぼっちなんて……」
泣きそうになりながら、俺はテレビのチャンネルをつけた。
「……あ。アニメはやってる。ラッキー」
じゃない! 俺は力の限り叫んだ!
「ここどこだよォォォォッ⁉」
出してくれ! 石田篤美 @isiadu_9717
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