第6話 なるほど、この世界ではチンピラも正統?な魔法使いなのか……。

……ん、ああ、寝てた。

顔あげるのだるいな。

突っ伏したままでいいか。


んで、寝る前まで何してたっけな?


……ああ、取材内容を頭でまとめてたんだ。


ええと、取り敢えず魔法関連の取材の成果のおさらいを 。



・この世界の人々は、誰しも魔力を持っているが、一般の人達は魔導石を介すことでしか魔力を行使することが出来ない。


・魔導石とは、種類によって様々な能力を持ち、魔力を通すことで更なる能力を発揮する石。(つまり魔力を導く石の略?)


・魔導石には色々な種類があるが、ひとつの魔導石につき発揮できる能力はひとつのみ。(チンピラの魔導石で電気を出したり、光を放つ魔とか石で火の玉は出せないという事)


・魔導石には、純度があり純度が高いほど更なる能力を発揮させやすい。(魔力の変換効率的な?)

また、基本的には純度が高くなっても、魔力を通していないときの能力の強さは変わらない。




って、まとめてたられいが突然寝やがったから、俺もお昼寝タイムと洒落こんでたって訳だ。

思い出してきた。


……てか呼ばれてた?

いや呼ばれてないか。

顔あげるのもだるいしな。



「あの……、起きてください」



ああ、呼ばれてたのか。

いや、確かに声はこっちに向かって発せられてる訳だが、玲に話しかけてるのかもしれない。


でも、玲が寝てたらら結局俺が代わりに対応するしかないよな。


取り敢えず、玲の様子だけでも確認するか。

なるべく頭をあげないように頑張って目だけで。


起きていたらいいんだけど。

──やはり寝ている。


はあ、後ろを振り向かなきゃいけないじゃないか。


くそ、また首に負担がかかるよ。



──あ、銀髪ロングのシスターさんじゃん。

にしても幼いな。

小学4年生くらいじゃないか?

服装は白黒のいかにもシスターっていう服だな。

だからこそシスターだとわかったんだけど。


後は、頭に赤い宝石がついたヘアピンを付けてるくらいか。

……そして普通に普通以上に可愛い。

さすが異世界。



「あの、あなたはそこの女性のお連れ様ですか?」


「そう、だけど……」



やっぱり玲に話しかけていたのか。

だとしても一体何の用なんだろうか。

というか初対面の人に話しかけられたら、目だけ合わせてスルーするのが、早くもテンプレになってしまった。



「それはちょうど良かったです。アップルパイが焼き上がったので、呼びに来ました」


「ああ、アップルパイね。わざわざ教えてくれてありがとう」



わざわざそんな事も伝えに来てくれたのか。

なんて素晴らしい人なんだ。



「いえいえ、そこで寝ている女性の方に頼まれたので呼びに来ただけですよ。オーブンに案内しますので着いてきてください」



つまり、玲は元々寝るつもりだったってことか。

だとしても、呼ばれたら起きてあげなさいよ。

というか寝るって決めてたとしても話してる時に寝るなよ。



「オーブンまでっ言ってもそんな迷う位置じゃないのに、本当にわざわざありがとう」


「気にする事ないですよ。これぐらいしかすることも無いですし、私が好きでやってることなので」


「することないのか。シスターって結構大変そうなイメージだったけど」


「本来ならそうなんでしょうけど、この教会は、私が来る前から教会としての機能が殆どないんですよね。今は市民の集会所としての役割が強いですね」


「なるほどなあ……」



入ってきた時に持った感想はあながち間違いじゃなかったのか。



「ここがオーブンですね」


「うん、本当にわざわざありがとう。いやマジで」


「だから、気にしなくてもいいですって。はい、アップルパイです」



結構美味そうじゃないか。

あんなに自信を持っていただけはあるな。

玲、普通に料理上手いわ。

っても、アップルパイだけで判断するのはあれか。



「ごめん。まあ、アップルパイは受け取ったし机に戻るか。いや、それにしても流石にくど過ぎた。ごめん」


「ああ、そんなことも気にしなくていいですよ。それより、あなたを見込んで頼みたいことがあるんですけど、いいですか?あの女性の方と一緒にやっても良いので」



え、頼みたいこと?突然だな。

しかも初対面なのに何故か見込まれてるし。


まあ、元の世界への戻り方が分からない限りどうしようもないし、善行は積んどくべきだと思うんだ。

ということで、



「俺は全然いいよ。玲がなんて言うか知らないけど」


「ありがとうございます。あの方は玲っていうんですね」


「ん?ああそうだ。名乗ってなかったな。俺は端北 透はたきたとおる。気軽に透で構わないよ」


「透、さん、ですか。なるほど分かりました。私は柄本 芽衣えもとめい、です。芽衣でいいですよ」



ん?ジャパニーズネーム、なの、か?

まあ、そっちの方が俺的に楽だけども。



「よろしくな。芽衣」


「いえ、こちらこそよろしくお願いします。ところで、玲さんって結構大人びてると思うんですけど、普通に人前で寝るんですね」


「確かに。堂々と机に突っ伏して寝てるな。しかも顔を横に向けて、かわいい寝顔を披露してらっしゃる」


「玲さん本当にかわいいですよね。でも、さっきも言いましたけど大人びてますし、一体何歳なんでしょうね」


「俺も実際は何歳か知らないな。起きたら聞いてみるか。……あ、ここ座ってどうぞ」


「あ、はい。ありがとうございます」



とりあえず、玲の隣に座らせて俺がその正面でいいよな。

それで玲が起きるのを待と──



「ん、ふぁぁ。よく寝たわ。あ、アップルパイもう出来てたのね。手を煩わさせてしまって申し訳なく思ってるわ」


「え、思ってるだけなの?謝るわけではなかったの?形にしてくれないの?」


起きるタイミングバッチリかよ。

てか、起きて早々土下座とまでは行かないけど、頭下げるくらいしてもいいんじゃないの?



「って、あなたいつの間にシスターさんと仲良くなったのよ」



無視なの?

寝ぼけてんの?わざとなの?



「今さっきだよ。柄本芽衣だ。玲って一体何歳なんだろうって話をしてた」


「芽衣さんね、よろしく。あと、私は16歳よ」


「はい、こちらこそよろしくお願いします。16歳って私と同い年なんですね。驚きました」


「「え?16歳なの?」」


「まさかの3人タメかよ。凄い驚きなんだけど。てっきり芽衣は10歳くらいかと」


「へー、みんな16歳なんですね。なんだか親近感湧きますね」


「俺たちの反応に動じないだと……」


「この子、絶妙にマイペースね……」



確かにマイペースだよな。

つまり、成長もマイペースだからこの幼さってことか……?

いや、不謹慎だな。

この手の反応になれてるだけかもだしな。



「あ、そういえば。芽衣、俺達になんか頼みがあるんじゃ無かったっけ?」


「頼み?透って案外お人好しなのね。まあ、透が受けるっていうのなら、私も受けるとするわ。助けるって言ったしね」


「ありがとうございます。端的に言うとですね、新鮮な死骸を持ってきて欲しいんですよね」


「「え?」」


「今更ですが、初対面に頼むような仕事じゃないですけど、どうかよろしくお願いします」


「いや、本当に今更だな!?なんだよ新鮮な死骸って!?」


「新鮮な死骸は新鮮な死骸ですよ」


「新鮮な死骸の意味がわかんなかった訳じゃねえよ!」


「やっぱり絶妙にマイペースなのよね、この子は……」

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