「昭和の下町から始まる、ひとりの“王子”の誕生譚」
- ★★★ Excellent!!!
昭和中期の東京・浅草橋。
工場の音と川の流れに囲まれた下町で、ひとりの男の子が生まれようとしていた。
しかしその誕生は、決して穏やかなものではない。
難産、産声を上げない赤ん坊、張り詰めた分娩室の空気。
生と死の境界が、静かに描かれる。
そして物語は、母フミの意識が途切れた先――
果てしなく広がる花畑という幻想的な世界へと移行する。
現実の痛みと、夢のような安らぎ。
その対比が、この物語に不思議な奥行きを与えている。
これは単なる出産譚ではなく、
「この子が生まれる意味」を問いかける序章。
蝶に導かれる母の行方と、
“王子”と呼ばれる存在の誕生が、
これからどんな運命へつながっていくのか。
静かで温かく、どこか神話的な始まりを感じさせるプロローグ。