雨に殺される「ニ」
数々の有名な小説家が自殺をしてきた。そういう意味ではヤマサトも小説家らしい最期を迎えたのかもしれない。濡れながら歩くのをすぐにやめた私は、ぼんやりと外灯を眺める。(だってこの後電車に乗らなければならないから。)
今日の通夜に来ていたクラスの奴らは、本当に全員だったのだろうか。自転車圏内に皆が暮らす中学とは違い、電車を使い通う人もいるのが高校だ。一人二人休んだって可笑しくはない。でも、きっと全員来ている。クラスメイトが死んだというイベントに参加しなかったという罪を背負いたくないから。
本当にヤマサトの死を悲しんでいたのは、ごくわずか、いやいないかもしれない。だってヤマサトのクラスでのポジションは――その程度のものだから。あの母親の態度を見るに、中学の同級生とかとは仲良くないのだろう。(ヤマサトが中学でいじめにあっていたことくらい、誰でも検討がつくはずだ。)
「……」
コンビニによってエナジードリンクを買う。一昔前なら、こういうタイミングで吸えもしないタバコでも買って吸ってみたりしたのかもしれないと、レジ前の注意書きを見て思う。
「うぐっ、うっ」
突然溢れてきた涙に、お釣りを受け取った私は急いでコンビニを出る。店員にどう思われたかなんて、どうでもいい。とにかく私は今、誰もいないところに行きたかった。
走って、走った。近くにあるはずのヤマサトと最後に話した公園に向かって。でも私の涙は間に合わない、泣き声も間に合わない。
「死ななくったっていいじゃんか!」
あの日のヤマサトみたいに、私は声を上げて泣いた。きっととても不細工な顔をしているだろう。公園についた頃、私の涙はだいぶ少なくなっていた、空が、雨という涙を、流してくれているせいで(収まったのかもしれない。)
傘をさしていると両手が使えないから面倒だ。今日くらい強い雨だと、首に柄を挟んでいると肩が濡れるから。(濡れてしまうから)
私と同じ、人のことを「あんた」と呼ぶヤマサト。きっと私と同じで、(誰でも彼でもあんたとは呼べなかったでしょ?)
ねぇヤマサト、あんたが死んだせいで、私の思考が、バラつくよ。(バラバラバラバラ)本当に私の思考が、バラつくんだ。
ベンチはびしょ濡れで、座ることはできない。だから私はベンチの上にエナジードリンクの缶を、置いてから、封をあける。(言葉として、缶の封で正しいのかは、わからないけれど。)
願うことなら(願うことなら)あんたのそばに合作を理由にいてあげたかった(ずっといてあげることはできないけれど)でも許してほしい(私が楽になりたいだけかな)私だってだいぶ壊れてきているんだ(信じてもらえないかもしれないけれど)確かに私は、あんたみたいに自殺するまで壊れてはいない(でも本当に壊れているんだ)でも、もうだいぶおかしくなってきている。(ねぇヤマサト、あんたは私のことを「壊れているふりをしているだけ」だって言うかな?)
だからさ、もし私が小説に喰われて死んだら、あの世で合作しようよ。そしてその記憶を持って生まれ変わってさ、その時代のトップをとろうよ。
小説家としてさ
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