第5話 その感情の名は【愛】
「異方に 心引くなよ 豊国の 鉄の弓末に 世はなりぬともッス」
「ん……。シンはいきなり、何を言い出すのかしら?」
「んっとッスね。将が死ぬ間際に最後に言う言葉を【辞世の句】と言うらしいッス。この大陸から東の海を渡った別の大陸で流行したみたいッス」
なんでそんなことを知っているのかしら? と想う、マテリアル・レイであった。それに、シンは死ぬわけが無いわ。ボクが守って見せるから。
「ん……。馬鹿なことを言ってないで、部隊に号令をかけてちょうだい。ボクはその号令と同時に、レイ・ダッシュの無力化に向かうわ」
「任せたッスよ。おっし、気合を入れていくッスか! 皆、よく聞けッス! うちの部隊には女神さまが居るッス! だから、俺っちとその女神を信じて、戦いきってほしいッス!」
シン・スー・リンが100人にも満たぬ、自分の傭兵部隊に号令をかける。例え、マテリアル・レイがレイ・ダッシュを無力化しようが、純粋に軍隊としての彼我の戦力差は10倍であった。シン・スー・リンは最悪、マテリアル・レイを戦場から逃すッスと想うのであった。
(レーン・アーツ隊長。天国のどこかから、おいらたちの活躍を見守ってくれているッスか? レーン隊長が届かなかったところまで、おいらは行きついて見せるッス。だから、どうかおいらに力を貸してくれッス)
シン・スー・リンがまぶたを再び開けたと同時に、彼の英雄物語は幕を開けるのであった。
☆☆★☆☆
いやあ、今回は楽しませてもらったんやで。バイロンくんに
ちなみに、本当はニンゲンが
ほんまに、ニンゲンは面白いんやで。まさか、創造主である、わいの力に干渉してきましたさかいな?
マニュアルにある【寵愛】を使うには100年単位の待機時間が必要なんやな?
でも、それだと、わいとしてはおもろないわけや。
だから、今回は、100年に1度しか使えへん【寵愛】を1つの
1人目は、バイロンくん自身も欠陥品と言ってまうほどの出来の悪さやったみたいやけど、わいは1人目のことを気に入っているんやで? そりゃあ、【寵愛】によって得られた力が4人の中で1番、弱かったけど、それも一興ってもんやで。
次に2人目は、バイロンくんは大成功と言っていましたが、わいとしては大失敗やったな。なんたって、【寵愛】から力を受け取りすぎたせいで、その反動として、ニンゲンの感情が欠如してしまいましたからな。わいは、ニンゲンや魔物たちが恋に焦がれて、愛しきヒトを護り、その身を犠牲にしていく。そんな愛憎劇が大好物なんや。だから、感情が欠如しているニンゲンが出来上がったのは、ほんまに面白くなかったんやな?
というわけで、ここで3人目の登場や。こいつは、【寵愛】を受けたにしては平凡な出来やったわけやが、場をひっかきまわすと言う点では、最高の存在やったんやで。
☆☆★☆☆
「ん……。ありがとう。シンの命を助けてくれたことには素直に感謝するわ。でも、あなたはもしかして、3人目の
「そうだっしー。うちはドクター・バイロンによって産み出された、3人目の
「ん……。ドクター・バイロンは、
マテリアル・レイは、訝し気に、眼の前に立つ女性を視るのである。
「そんなに警戒しないでほしいっしー。うちはドクター・バイロンがたまたま、床に落とした4つ目の
「たまたまね。偶然が重なれば、それは必然となるわよ?」
マテリアル・レイは警戒を解かぬまま、3人目の
「ほな。そろそろ、4つ目の
マテリアル・レイは、想わず、くっ! と唸らずには居られなかった。シンは一命を取り留めた。だが、それは本当にただ単に命を落とさなかっただけである。
「シンに、ボクたちと同じ存在になれと。同じバケモノになれと言いたいのかしら?」
マテリアル・レイの声には明らかに怒気が孕んでいた。シンは、人智を超えた力を持つ自分を普通のニンゲンとして接してくれた。それはマテリアル・レイにとって、かけがえのない大切な何かを育ませた。
彼女はまだ知らなかった。それが【愛】だという感情であることに。
「うちは別に、その男がどうなっても構わないよ? でも、そのままだと確実に、一生、ベッドに縛り付けられるだけの生き物になるっしー。それなら、うちが持っている
続・創造主Y.O.N.Nと核所持者たちとの余興曲 (バディヌリー) ももちく @momochi-chikuwa
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