115話

 それから一つ息をはくと、レイラの身体を労るようにゆっくりと訪ねた。

「………さて、もう一度聞きたい。体調の方はどうかな? なにか変わったことはあるかのぅ」 

 その質問に、レイラは布団をしっかりと身体に被せ直しながらも答える。


「え、えと。とりあえず、身体に異常とかはない? ……です。ちょっと頭がフラフラしますけど……たぶんその原因って、今まで寝てたからだと思う、ので」

 ただ、どこかつっかえて話し方が辿々しくなってしまっているのはやはりつい先程起きたばかりだからだろうか。

 聞いていたドミニクは心配になった。彼女がまだ本調子でないことは声を聞く前から何となく気づいてはいたが―――まだ会話は早かったらしい。



 一度目を閉じて心を落ち着かせると、ドミニクはにっこりと笑って言った。

「何はともあれ、目を覚まされて本当によかった。まだしばらくは身体もダルく感じるじゃろうから、今日はここまでにしますぞ。あとで食堂の者にご飯を持ってこさせるよう頼んでおくのでな、しっかりと食べてくだされ」

 そう言えば彼女レイラは感謝をのべながら頭を下げた。同時に側にいたディックが彼女を支えようと動き出す。

 何度も何度も頭を下げるのでそれを頷いて返し、ドミニクは席をたって部屋を出た。






 扉が音をたててしまると、部屋のなかは水を打ったように静寂になった。物音一つもなく、聞こえてくるのは窓から吹く風の音や外でさえずる鳥の声のみ。

 そんな空間だから、少し居心地の悪さを感じた。まるで何か話をしようとしても、それがなぜか躊躇われるような気がして。



 ―――そんな変な空気のなか。

 次に口を開いたのは、ずっと黙ったままでいたディックだった。

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