92話

「騒がしゅうてすまなんだ。いつもはあのようなことは滅多にないのじゃが……」

 何をやっておるのやら・・・と、苦味を潰すような顔になるドミニク。

 しかしすぐに表情を変えまずはディックと幻獣のスカイに深々と頭を下げた。グレイが非難の声をあげかけたが、それを彼は鋭い目線でめさせる。

 今日の門番当番であった青年もドミニクに習ったかのように慌てて頭を下げる。暫く間を置いてから、グレイも軽く頭を下げた。


「いや、こちらこそいつまでも甘えてしまっていたようで………申し訳ない」

 ディックもそう返事を返して頭を下げる。

「客人が謝るようなことではない。むしろ謝るべきはこちらの方なんじゃ。だからどうか、頭を下げんでくれまいか」

 ドミニクに言われ、渋々とディックは頭を上げた。だがどこか不服そうな表情かおになっている。

「しかし―――」

「代表の言う通りです! うちのメンツがご迷惑をおかけし、本当の本当に申し訳ありませんでしたっ!!」

 何かをいいかけたディックだったが、それを遮るかのように門番の青年がまた頭を下げた。


 二度目の謝罪に困惑するディック。おろおろと目を泳がせていたが、

「……もういいから。謝罪は受け取った」

 と困ったように笑いながら言った。




「……で、じゃ。先ほどの件は水に流すとしても――そこのお嬢さんはどうされたのか? 意識がないようじゃが」

 コホンと咳を一つしたドミニクは、ディックの腕のなかにいる彼女に目を向けた。

 フルフルと頭を横に降り、ディックは問いに答える。

「いや、俺はこいつが怪我したって聞いてここに来た。だからなんでもうこの状態かは……俺にも分からねぇ」

「そうじゃったか………うぅむ」

 ドミニクが唸り声をあげる。

 その唸り声にグレイが、

「見つけたのは私ですにゃ。どうやら追いかけられている連中に捕まりかけてたようだったのにゃぁ」

 これまでの説明を手早く始めた。

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