91話



 ―――そんな不穏で、かつキンキンに冷えきった空気となってしまっているなか。


 ドミニクはため息を付くと、大きく息を吸い込んだ。そして。




「各自さっさと仕事をせんか!! 説教なんぞ聞きとうないなら今すぐに動くのだこのアホんだら共が!!」

 ここにいる窓から顔を出した者たちも含めた全員に向かって睨み付け、大きく一喝したのだ。




 ビクリ、と彼らは大きく身体を震わせた。

 一喝したドミニクの声量は、ビリビリとその場の空気と肌を大きく粟立たせるほどのもので。耳をしっかりと押さえなければ、鼓膜がバチンと衝撃だけで破れそうなほどであった。

 それと同時に―――ここにいるほとんどの者にとっては恐怖の対象でしかなかったらしい。

 なぜならドミニクが睨み付けようとする前に、彼らはすでにこの場からいなくなっていたのである。



 ようやく静かになった場をくまなく見渡し、ドミニクはまたため息をついた。

「……まったく、年寄りを怒らせよってからに。挨拶はしょうがないというても客人を迎え入れるためではなく、騒がしい野次馬になるとはのぅ。なにゆえこんな馬鹿馬鹿しいことを……」

 年寄りの小言という名の独り言をブツブツと小さく呟いている。聞こえていたのか隣の青年は苦笑いを浮かべた。

 グレイはというとやれやれといった風に手を額にあてて頭を降り、エルフの青年はしかめっ面になっていた顔をようやく元の無表情に戻した。





 ・・・やがてある程度の時間が経ったあと。

 ドミニクは独り言をやめ、あの青年を含む三人と一匹に身体を向けた。

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