80話
・・・とにもかくにも。まずは残った敵をどうにかするのが先になりそうだった。
幸いなことに相手はまだこちらに気付いてはいない。物陰に隠れているのもあるが相手は
普通であれば次の敵の襲撃に備えて周りの様子を確認するのが定石であり、まさに今それをやらなければならないところ。
というのも、敵の襲撃があるということはさらに次の第二・第三波の攻撃が来る訳で。どこから襲って来るかもわからないのに周りの様子がわからないようでは、次の攻撃に備えることも出来ない。
・・・だというのに―――彼らは見ていないのである。白翼猫に全員が気をとられ過ぎていて。隣国の町という彼らが知らない地理の中で、今まさに次の攻撃が来るかもわからないのに。
・・・彼らは『油断大敵』という言葉を知らないのだろうか?
考えている暇はない。とにかく今のうちに敵の戦力を少しでも削らなければ。
グレイは腰に装備している刀身が短い忍刀を
鞘のままの忍刀は兵士たちの急所を適格に捉え、ものの見事に当てていった。おかげでその兵士たちは声を上げる間もなくどんどんと倒れていく。
その確認もできぬままに次々と相手を沈めていった。相手には絶対にばれないよう、気配を完全に消しながら。
力の消えた手から、彼らの武器である鉄の槍や剣がカランカランと音をたてて落ちていく。その音はこの路地裏に響き渡るほどの音量があった。
しかし、他の兵士たちはどんどん仲間が仕留められているということに気付きすらもしない。音だってしているし確実に聞こえているはず。なのに気づいていないのだ。
・・・何度でも言おう。彼らは前にいる白翼猫だけに気をとられ過ぎているせいで見えていないのだ。周りの様子が変わっていることに。敵の次の攻撃が、すでに来ていることに。
(……次に、いくのにゃっ!!)
残りの兵士たちが気付かないように祈りつつ、グレイはさらに仕留める手を早めたのだった。
* * * * *
―――スカイは今、猛烈な怒りの中にあった。
興奮するとともに熱は全身に駆け巡り、どんどん力が溢れ出してくる。今ならどんな相手であろうと―――とはいえ幻獣族のなかで一番強いとされる
その動力源となっている想いはこの二つ。
主たる
スカイは牙を剥くと、また大きく唸り声を上げた。翼を大きく広げ、脚の爪を剥き出しにし、眉間にシワを寄せて敵を睨みつけながら。
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