52話
彼ら4人のあとを着いて行きながら、ディックが玄関のなかへと入った。レイラもスカイの上から降り、その後に続きながら中へと入っていく。
建物のなかは元貴族の家なだけあって玄関だけでもすでに広々としていた。床はピカピカに磨かれた大理石、照明は煌々と部屋を照らすシャンデリア。
右側には
まっすぐ奥に行けば上へと続く大きな階段があるのが見えた。
大階段から右奥の壁には、依頼の紙が貼られたボードがこの雰囲気には場違いかのようにいくつも壁に掛けてあった。
近寄って見てみれば買い物などの簡単なものから商人の護衛やモンスターの生体調査などの難しいものまで、多種多様の依頼がそこにたくさん貼ってある。それをレイラは興味津々な表情で凝視していった。
なかには依頼の紙が何枚も重なって張り付けられているのもあって。それを上の紙を
そんな彼女の後ろでは、
「……気になってるのか?」
「ギルドに行くこと自体が初めてだし、気になるんだろうな」
「まさになにも知らないお嬢様の典型的な光景にゃ」
スティーブの疑問にディックが答え、グレイが無表情な顔で吐き捨てた。ディックが相手に睨み付けるも、当の本人はどこ吹く風だ。どうやら最初の印象通り、この猫男には歓迎されていないらしい。
ある程度見終わったところでスティーブがレイラに声をかけた。
彼女は頷きスカイに声をかけると歩き出したスティーブたちのあとに続いていった。
大階段に向かって真っ直ぐ歩くたびに、近くにいた人たちがこちらを見てくる。ある者は羨望の眼差しを、ある者は好機の目を、またある者は嫉妬にまみれた目をこちらに向けてきていた。
好機の目や嫉妬の目は分からなくもない。ディックを含む周りの5人は皆見目麗しく、そしてカッコいいからだ。だからこそ一緒にいる自分は不釣り合いではないかと、そう考えてしまう。
しかしながら、なぜ羨望の眼差しもあるのだろうか?
(……あたし、に向かってではないよね。絶対違うよねそれ)
疑問がむくむく膨らんだが、階段を上がれば見えなくなったので考えるのをやめた。
ちなみにその羨望にはレイラのことも含まれるのだが、自分のことはとんと無自覚なのでわからないようである。
3階にある
その扉をスティーブが叩きながら告げる。
「
と。同時に一緒にいるリディアナたちがピシッと背筋を伸ばした。
数秒たった頃、
「……入りなさい」
部屋のなかから少し
スティーブは返事を返すと扉をあけて中へと入る。そのあとに、リディアナたち三人やレイラとディック、そしてスカイが続いて中へと入っていった。
部屋のなかもやはりとても質素なものだった。元貴族の家なので部屋の大きさは十二分に広い。普通の家の部屋が何個も入りそうなほどだ。
しかしあまりにも物がないからか余計に広く感じる。あるのは紙仕事に使う椅子に大きな机、書物がしまわれている本棚、来客用に置かれた三人掛けのソファが二つと一人掛けのソファが二つ、そして小さなテーブル。
たったそれだけである。
そして―――その奥の机にこの傭兵組織の
見た目は初老のおじいちゃんだ。少し白髪の混じった黒い短髪に顎に残った無精髭が老齢の貫禄を見せている。だがしかし、街で見かける他の老人よりもどこか若々しく見えた。やはり平均的な老齢の人よりも身体が筋肉質にみえるからだろうか。
なにより彼が出す圧力が数多くの歴戦を潜り抜けてきた猛者だと主張するかのようにかかってくるのが分かる。レイラの額にたらりと冷や汗が流れ落ちていった。
スティーブたち4人がドミニクのいる机へと歩いていく。そして机の前で立ち止まると、ビシッと一部もずれることなく敬礼した。
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