15話
―――今思えば、これまでの
決してこの悲劇を忘れるな。そう彼女に言い聞かせるかのように・・・。
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―――夜空の下、荒れ果てたどこかの野で。
目の前で起きたことを見てしまった彼女は大きく泣き叫んだ。
『………ッあ、あぁいや、…………………いやッ、嫌アァァァァァァァァァァァァァァァッ!』
その目線の先には、腹に黒いナイフが深々と突き刺さったエルフの青年が。
そのナイフは深紅のラインが入った白い鎧をいとも簡単に貫き、柔らかい腹の肉に深く真っ直ぐに突き刺さっていて。そこから赤のラインよりもほの暗く赤い液体が、あとからあとからドンドンと泉のように溢れ出てきている。
刺されたことに気づいているのかエルフの青年は少しぎこちなく笑みを浮かべると、ゆっくりその場で倒れていった。
泣き叫びながら彼女は―――『 』はかくりと落ちそうな足を懸命に前へと動かし、途中で
落ちていく涙すら、拭く時間を惜しむかのように。
だが。
その前に光さえも飲み込む漆黒を身に纏った男―――いや、光すらも飲み込まんとする漆黒の鱗を持った
黒い竜は彼女を見据えるとニタリと嘲笑いながら口を大きく開き、唾液にまみれた牙をこちらにわざと見せた。そしてその牙で彼女の柔らかな身体を喰らおうと弾丸のように迫ってきた。
しかしそれを読んだかのように彼女は上へと飛び上がって攻撃を回避する。そして赤い翼を空中で大きく広げた。
攻撃を外した竜は次に大きく鋭い爪を振りかざす。そしてその爪で目の前の獲物をずたずたに引き裂こうと、片方の前足を勢いよく振り下ろした。
その攻撃に彼女は両手に持った黄金の杖でしっかりと受け止める。同時にその杖は光り輝き、赤い光の幕を広げた。
その光の幕と漆黒の爪が衝突した瞬間―――
眩しいくらいの閃光と爆発がその場所をすぐに埋め尽くした。同時に巻き起こった爆風が辺り一面を一瞬にして覆い隠した。
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