12話


 その日は朝からどんよりとした空模様で。雲が空を覆い隠し、今にも雨が大きな音を立てて降りだしそうな様子だった。

 スカイもいつもなら庭に出て昼寝をしているのに、今日は不安そうにおろおろとリビングを歩き回っている。まるでこの先に起こる不吉ななにかを無意識に感じ取ったかのように。

 スカイをなんとか落ち着かせようとするレイラだが、彼女もまた同じくらい大きな不安に押しつぶされそうになっていた。


 それが何かははっきりと分からない。けれど、絶対に当たってほしくないのと同時にたぶん当たるだろうという確信めいたものがどこかにあって。だからか気掛かりはどんどんと大きくなっていくばかりで。

 レイラはフルリと寒気ではない何かで震える身体をギュッと両方の腕で思わず抱き締めるのだった。





 そんな時。ドンドンドンドン! と、玄関のドアを乱暴に叩く音が。

 突然の来客にほんの少し警戒しながらも、ゆっくりと外のドアを開けて隙間を覗く。


 そこにいたのは幼馴染みのディックだった。焦りで走ってここに来たのか額に汗が見えるし、呼吸が切れて肩を上下に揺らしながら息をしている。

 知っている相手だったことにレイラはホッと息を吐いて扉を開ける。そして、

「どうしたの? すっごい慌ててるみたいだけど……朝早くからなにかあった……?」

 と、出来るだけにこやかに訪ねた。大きくなっていく動揺を隠し、悟られないように祈りながら。



 数秒後、ディックは難しい顔のまま固く閉ざした口を開いた。

 その衝撃的な内容にレイラは、数秒間なにを言われたか分からなくて言葉を失う。それと同時に耳に聞こえる全ての音という音が、彼女から一瞬にして遠退いていくのがわかった。









 外ではいつの間にかシトシトと弱い雨が降り出し始めていた。

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