11話


 ジェシカやディックがレイラの家に来るようになったのは約一年前のから。それまで彼らは遊びに来ることはあっても家のなかにまで入るようなことは少しもなかった。入って来るときといえばレイラになにかしらの用事があった時だけ。それ以外は用事が終わるとすぐにそれぞれの家へと帰っていたのだ。

 それが―――のあとからどちらも家に入ってくるようになった。『大切な用事』という名目上の理由を掲げ、レイラが気を使わないようにと配慮しながら。




 どうしてそんなにも頻繁に来てくれるのか。

 それはおそらく、二人にとってのレイラが"大切な『友達』で大切な『幼馴染み』だから"。少なくとも本人レイラ自身はそう思っている。幼馴染みで友達がとっても心配で、だから定期的に見に来るのだということも十分にわかるのだ。それを分かっていて、だからこそ心配をかけまいと毎日のように努力している。

 だが・・・やはり一人でいるのはとても辛い。少しでもはやく、はやく兄と姉の二人が帰って来てほしいと、何度も何度もそう願ってしまう自分がいる。その自覚がある。



 それが例え―――






          * * * * *






 夜になると、二人はレイラと共に夜のご飯を食べてからそれぞれ自分の家へと帰っていく。

 二人を送り出したあとは寝る準備をして、ようやくレイラの一日は終わるのだ。最近はそんな充実した一日を過ごすことが、この数ヶ月で増えていた。

 時にはちょっとしたハプニングがあったりもしたが、それでも十二分に心休まるような毎日だ。おかけでレイラに笑顔が増えてきたのは言うまでもない。








 ―――この先も落ち着いていて穏やかで平和な生活が続いていく。いつかはディックもジェシカもこの村を離れるかもしれないけれど、それまではこの三人で仲良く日々を過ごしていける。レイラはそう信じていた。


 次の日、とある連絡を受けるまでは。

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