7話
二人がいなくなったのだと気づいた数ヶ月の間は、ほとんどずっと泣くことしかできなかった。
泣いて泣いてたくさん泣いて泣きまくって、家の中にあるものを投げたり破いたりした。寂しさが大きくて家の外を歩くことすらなかった。外出できなかった。
今思えば子供が起こす八つ当たりのような、癇癪のようなものだったのだろう。家には自分しかいないとわかっていたから、誰かにこのもやもやを吐くことなんてできるはずなかったのだ。
それでも泣きまくって嫌なこと全部洗い流して、少しずつだが気持ちを穏やかにすることができてきていた。いつかは帰って来るに違いないからと、二人の部屋を片付けることもできている。
だが。
ようやく薄れた今でも、当時を思いだしてまた泣きそうになってしまうのは変わらない。会いたいと―――会って一度でもいいから話がしたいと、ほんの少しだけそう願ってしまうのだ。
その思いはなかなか消えなくて、でもどうすれば綺麗サッパリ消えてくれるのか全然わからなくて。誰かに相談するなんてそんなこと―――できるはずもなくて。
結局その溢れんばかりの苦しい気持ちを無理矢理奥へと押し込むことしか、他にできることはなかったのだ。
そして。今日もまた当時のことを思い出してしまい、気持ちがさらにグッと下がっていくのを感じた。無意識にでもいつの間にかこうやって考えてしまうのはまだまだ癒えていないからだろうか。
(……あたし、は……………)
その時。
チリンと呼び鈴が外の玄関から小さく聞こえてきた。どうやらちょうどお客さんがこの家に来たらしい。
その音でハッと正気に返ったレイラは頭を振ってそれまでのことを無理矢理忘れることで気を紛らす。そして客は誰なのかを確かめるために、玄関の方へと歩いていった。
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