6話 



 ―――それは本当に突然のことだった。

 当時はあまりにも驚愕で、あまりにもショックなことだったと思う。



 長年一緒ずっとともに暮らしていた家族である双子の兄と姉が―――少女の十五の誕生日の、その次の日に出ていったのだ。

 言伝てを残しプレゼントを残し、ひとり少女レイラを家に残して。




       * * * * *




 きっかけはおそらくいくつもあったのだと思う。

 昔から二人とも自由人―――とまでに行かないが、それでもどこか首を傾げるような姿が少しだけあった。

 例えば朝や昼、夜の食事のときや寝る前の時間のとき。仕事をするために家を出るときや家に帰ってくるときなど、どこかあれ? と思う瞬間があった。笑顔を浮かべて楽しげな雰囲気のはずなのに、ふとした瞬間だけなにか憎悪のようなものがちらりと見えてくるのだ。

 それが誰に対して、どんな感情を向けていたのかは今でもわからない。けれどその場面を何度も見かけることが多くて困惑したのを覚えている。


 それでもレイラは見なかったふりをして毎日を過ごした。それがたとえ・・・と気づいても。




 兄は村の用心棒として、姉は学校の教師として仕事をしていた。毎日楽しく仕事をして帰ってくるさまはずっと近くにいた少女でさえ、とても嬉しかったものだ。少なくとも今は側に誰かがいるとわかっているから。

 用心棒をしている兄はよく村の詰所近くで仕事をしていた。というのも彼は村に来た客人にとても人気で、詰所を離れて案内することが用心棒としての仕事より格段に多かったから。村でも一・二を争うほどのイケメンぶりで、同年代の女性たちにはかなりモテていたのを覚えている。

 対する姉は学校でたくさんの生徒から人気があった。天然気質の彼女は愛嬌があり、さらにいえば生徒だけでなく村の誰にでも好かれていた。姉の方も同年代の青年たちに何度も告白される場面を見たことがあり、いつも輪の真ん中にいた。









 ―――だからこそ。

 なぜ一つの相談もなくいきなりいなくなってしまったのか。なぜ少女だけを一人村に残し、この家を出ていってしまったのか。

 その疑問はいなくなって一年以上経った今でも分からないままでいる。答えは一体いつ出るというのだろうかと、そんなことを考えながら。



 少女レイラは今日も一日を過ごすのだ。

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