5話

 ―――朝食のあと。


 まだ中身が残っているカップだけ残し、使った皿は全て台所へと持っていくと手早く洗って片付けまで行った。それらがようやっと終わった頃に、休憩するために静かに元の席へと座り直す。

「……ふぅ」

 カップを手に取り口元に近づけて傾けながら、レイラは今日のうちにやっておくべきことを思案し始めた。


 外は明るく、柔らかい風が時折優しく吹いている。

 その風のなかには今のところ彼女だけしか見えない風の精霊・シルフが遊ぶ姿もあった。シルフたちは丸まって寝ているスカイの翼をいじってはけらけらといたずらっ子のように笑っていて。もうすでに夏近くだから、緑の葉を繁らせた木々が風に吹かれながら日の光に当たってキラキラと反射していた。





(……いい天気だな)

 外を見ていたレイラは、小さなため息を吐いた。

 ―――そんな明るい外とは裏腹べつに心はどんよりと下向きになっていることに、自分でもなんとなく気づきながら。





             * * * * *





 脳裏に思い出すのは去年の彼女の誕生日のこと。


 日が落ちて月が見える夜。魔力の光が照らして明るい部屋のなか、笑い声がいつまでも途切れることはなかったあの日。

 スカイが自分の側にいて、テーブルの上にはケーキや美味しそうなご飯がたくさんあって。沢山のプレゼントの山もレイラのすぐ近くにあって。

 それから彼女の近くには―――今までずっと一緒に過ごしてきた年の離れた家族の兄と姉がいて。





 とても幸せだった。そう・・・一日が終わって次の日になる、その時までは。

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