星泥棒

安良巻祐介

 

 夜、家の窓に小さな蜘蛛が這っていたとき、祖母がそれを見て星泥棒と呼んだので、えらく洒落た名前だなと思って、なぜそう呼ぶか尋ねてみた。

 祖母曰く、その蜘蛛が窓硝子の表面を好み、それもよく晴れた、綺麗に星の見える夜にばかり現れるので、星を取りに来るのだろうと考えたのが由来だそうである。

 青白い冬の硝子の上に点々と淡い光が滲み、その上を、か細い八本の足を使ってゆっくりと動いて行く小さな小さな蜘蛛は、確かにそう言われてみれば、手の届かぬ遠い光に焦がれてどこまでも追いかけて飽きない、とぼけた浪漫家に見えてくるのであった。

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星泥棒 安良巻祐介 @aramaki88

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