第10話
サーーーーー…… 細い雨が降りしきる。
閃光が走って、ドロドロと雷が鳴り響く。
こんな日は空飛ぶ鳥たちも、きっとどこかで雨宿りをしているんだろなー。
彼女は窓にへばりついて僕の帰りを待っている。
ただいま、と僕の声が響くリビングに、コトコトとシチューを煮込む匂いがして、混じり合った野菜たちの立ち昇る蒸気に、ごくりとひとつ喉を潤す。
世界でひとつの魂に同じ匂いを嗅ぎとって、すれ違い凝視して、そっと近づき、もつれ合う。
いくつかの魂と引き合って、やがてそれはひとつの世界になる。
逆説的な言い方をすれば世界はひとつの風になる。
風に乗ってフワフワと漂って泳いだり、時に溺れそうにもなるもんだ。
支度のできたテーブルに、ひとつ小さな花を飾った。
僕たちの小さな記念日。
いつの日か大輪の花を咲かせるように、僕らは仲良く夜を明かす。
幸せなひとときを過ごす仲間に、いま僕たちはエールを送る。
大きな時間の流れの中で、一時根を下ろすには最高の場所じゃない?
生まれてくるキミに、僕は僕の全てをかけて、キミの命に感謝する。
冷たいけれど暖かい冬の、いとおしい美しい雨。
『僕の彼女』 ぽふ、 @a-piece-of-harmony
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