剣豪・柳生十兵衛――宮本武蔵に並ぶ時代小説最大のヒーローである。
この名を聞き、血湧き肉躍る読者は決してこの作品に裏切られることはないだろう。五味康祐、山田風太郎、隆慶一郎、石川賢、荒山徹――あまたの作家たちが紡いできた大剣豪の物語に、いま新たなる傑作が列席した。
ここには、我々が胸を踊らせたあの十兵衛がいる。その父・柳生但馬守宗矩のふてぶてしい策謀家の顔がある――さらには天下の将軍・徳川家光の意外な姿をも作者は描いてみせるのだ。
否、それだけではない。
この作者はこの十兵衛の敵役として、あの剣豪・宮本武蔵の敵の中でも最も印象的な敵であった宍戸某――吉川英治によって宍戸梅軒と名付けられた鎖鎌の達人の一族までもぬけぬけと登場させてみせるのである。
時代小説ファンなら誰もが興奮する夢の対決!!
宮本武蔵の二刀流をもってして漸く倒しえたこの大敵を前に、我らが柳生十兵衛はいかにして挑むのか――その顛末については、実際にこの作品を読んで確かめていただくとしよう。
軽妙洒脱な文体に、簡潔に短くまとまった構成は、時代小説に慣れない読者も手軽に読むことができるだろう。「トンデモ」時代劇を読みたい人は是非。