王と王女も混ざりんこ


 外からドカドカ、トコトコ足音が近づいてきて声が聞こえてきたのだ。よく知った声。


「ルィル? こんなところでどうした?」


「わたくしはお勉強が一段落したのでサイにお茶をお願いしにいこうと思いまして……。お父様こそお仕事は?」


「いや、ちょいと息抜きとあの方がいらしているそうだからご挨拶を、と思ってな」


「どなたですの?」


「ああ、昔から私が世話になっていた体術の調練師殿だ。厳しく容赦ないがそれでも強みを活かしてくれる方法で鍛えてくださってな。ココリエも一回か、二回ほど世話になっているが、ルィルは用事がないからな。ちょうどいい、一緒に挨拶をしようか」


「はいっ」


 廊下の外から聞こえる声。ファバルとルィルシエの声にセツキはあからさまに助かったという顔をした。が、チモクはそんなセツキを見て「青二才め」みたいな目。


 ……いや、口以上に目って本当にものを言うものだなー。と、ココリエが思っていると襖の外が静かになり、開かれた戸の向こうにはやはり予想通りの姿があった。


 ココリエの父ファバルと妹のルィルシエ。ふたりはにこやかな顔をしていた。そう、最初だけにこやかだったが、室内の空気に「ここにいてはいけない」と察して逃げようとしたがチモクの声、音速がいくらも早かった。


「おお、コヒオス。よいところに来た。ちょうどおんしの布団地図の話をしようと」


「チモク様ーっ!? な、なんなな何十年前の話をしようとしておられたのですか!?」


「おい、そんな話だったか?」


 サイの突っ込み。だが、チモクにはもういっそ清々しいほど華麗にスルーされた。


 セツキもココリエもなぜチモクがまったく違う話題をあげていた、と嘘を言っているのか訝っている。突然、知らない名がでてきてサイはそっちもイミフだ。


 が、セツキが突然はっとして祖父の言葉を止めようとしたが、遅かった。チモクはそれはもうものっそいい顔でそれをぶっ放した。セツキとファバルへの爆弾を。


「いやの、セツキに想いびとがいるようなのじゃが吐かんのじゃよ。じゃからここはコヒオスの面白恥ずかし楽しい愉快な話題で笑わせて吐かせちゃろうと思ったんじゃ」


「なーっ!? なにをやらかそうとしておられ、いや、まさかもうすでに? ココリエ、セツキ、しかもサイ!? なにを聞いた? 私のなにを聞いたのだぁあああ!?」


「いや、なにも聞いとらんが」


「本当か、本当だな? 嘘じゃないな!?」


「嘘は嫌いだ、バカ」


 本当めっちゃ気軽に王へ向かってバカと罵りを吐く娘だ。ファバルはチモクの愉快すぎて暗黒仕様な冗句に寿命でも削られたのか、へたり込んでぜーぜー言っている。


 ……面白い。面白い、そう思ったのはサイだけでココリエもチモクの狙いに気づけた。が、止める術はない。なかった。だって、この歳頃は大好きだもん。


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