戦士たちと憎悪
「くっ、なんて姑息な」
「けど、有効な手だわ。トウジロウとお母様が知っていて私たちは対策できていたのだから贅沢を言ってはダメよ」
複数の閃光弾による先制攻撃で不意討ちを喰らった三国連合軍の中で平然としている者が三人、耳栓を外して車からおりてきた。巻き込んだ二国には相手に特殊なその場凌ぎの道具があることを伝えていなかったので、二国はすでに壊滅的な被害を受けている。
これでは連れてきただけ無駄だったかもしれない、と思いながら車よりおりた一番の年長女性が閃光弾で発生した光の向こうを薄目で睨みつける。
爆光の向こう、いる筈の敵を探す。
「弐の矢、放て!」
強烈な光の中で敵を探していたシレンピ・ポウの女たちの耳に声が飛び込む。
と、同時に複数の矢が雨霰と降り注いできた。女三人は即反応して車の陰に退避。
逃れた、と思ったのに、車の後方に矢が一本飛んできた。矢の狙う先にいたヴァティラが屈んで避ける。が、完全には避け損ねた。見合いに訪れた時のと違う軽装の王女は肩を裂いていった矢に舌打ち。
しかし、あまり深く抉られてはいなかったので問題ないと判断し、すぐ、妹と一緒に武器を構えてすでに見た目に似合わぬ大物の得物を抜刀している母親の前に陣取る。
「やはり、あなた方も戦士でしたか」
「その声……おのれ、よくも、ファバルの腰巾着がのこのことわたくしの前に……っ」
「聖上やサイを恨むのは筋違いです。王子が死んだのはあなたの、チェレイレ様の短慮と愚考が故。それによって喪った者を悼むならばわかりますが、こうして無関係な国をも巻き込むとは……少し、恥を知るべきでしょうね」
「黙れぇえええええっ! アレはサイが邪魔をしなければ、アレのせいで、そのせいで」
「指図される謂れはありません。そろそろサイの言う効果時間が切れる。参ります」
「あぁあああああっ! 許さないっデオレドの仇! ヴァティラ、キュニエ!」
母親の狂気の叫びに兄を喪い残された妹であり、姫たちがひとつこくりと頷く。
ヴァティラの細腕には少し一般的なものより細身な薙刀。妹キュニエの両手にはこの戦国に馴染みのない奇妙な形状の刀が握られている。ふたりの姫は晴れていく、もしくは弱まっていく光の向こうを睨みつけ、いつでも飛びだせるように姿勢低く構える。
ザク、と音。林にはさまれていても整地された道にふたりの男が現れた。戦国の柱と誉高い鷹のセツキと虎のケンゴク。ふたりはそれぞれの得物を手に三人の女をどこか憐れむように見つめる。だが、これ以上、この場に会話は不要。
それは双方が理解している。
なので、光の幕が完全に去ると同時に双方構えを整え、敵対者に向かい飛びだした。
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