第2話
「フレイア・ヴィズ...フレイア...フレイア様?」
フレイアと出会い、会う、と決めてから一夜がたった。早速城下町に行くと決めたアレンは、荷物をまとめて家を飛び出す。
とりあえず一目見れればいい。城下町のどこに行けば会える?ということをいつまでも考えながら歩いていると、すでに城下町に入っているところだった。
「いつのまについたのか...。」
「やはり来たな、少年。」
「んなっ!?」
背後から声がした。
昨日の、フレイアを連れ出した女騎士____
「お前はっ...!」
「そう怯えるなよ。フレイア様に逢いに来たんだろ?一目惚れですか?」
「ひとめっ...ぼれとかじゃねぇよ...」
少し頬を赤らめてから、顔を伏せた。アレンの状況に笑いながら、騎士は話を進める。
「改めて自己紹介をさせてもらいたい。私はルージェント王国魔法騎士団所属、アレッタ・ジーナス。19歳だ。」
「俺は庶民街に住んでるアレン・クラウ。17歳だ。」
アレッタはよろしくな、と笑みを浮かべると、少し崩れていた服を直して続けた。
「フレイア様を知らない、ということは説明事項が増えることになるが、とりあえず会っていってくれないだろうか。フレイア様もお望みなんだ。」
「あいつ...じゃなくて、フレイア...さんがですか?」
昨日少し会話を交わしただけの、自分が一方的に気にしていた少女と会える。
恋心とはまた違う、そわそわした気持ちが離れなかった。質問したいことが頭の中で埋め尽くされる。
「ここからは城の敷地だ、アレン・クラウ。ということはどういうことがわかってるな?」
「は、はあ...」
(フレイアは城に住んでるのか?やっぱ王族とか騎士団長のなんかとかか...?)
城、というワンフレーズで一気に緊張が増して来た。いよいよ城内へと足を踏み入れる。敷地に入ってからというもの、数えきれないほどの騎士を目にした。アレッタが一人一人に敬礼をしているのを前に、緊張を隠しきれなかった。
「うおっとっとっと、危ない、伏せてぇぇ!!!」
「はっ!」
上から降って来た(という表現が一番ふさわしいだろう)少女を、アレッタは瞬時に見抜き、魔法を使い木々で少女を支えた。
「ふぅ...。助かったわ、アレッタ!」
「フレイア様...。なぜ突然降ってくるのですか..?」
「まあいろいろあって...。んあ!?き、き、昨日の!」
フレイアは瞬時にアレンに飛び寄り、アレッタが生成した木々はするする地面に消えていった。
「昨日森で会った人よね!?また話してみたいと思ってたんだぁ...。」
「フレイア様、立ち話はなんですし、城内にお入りなさっては」
「そうね!行きましょう!」
フレイアとアレッタは王族の住む入り口、大扉を通り過ぎ、別棟【ルージェント王国魔法騎士団】が住む入り口へ向かった。王族の住む入り口とは違う雰囲気が流れる。一気に緊張が走り、一瞬中に入るのを戸惑う。
「大丈夫だ、アレン・クラウ。団員はガタイのいいものばかりじゃない。私みたいな女もたくさんいるさ。フレイアの棟はこっちだ。」
入り口を抜けると通路が二手に分かれており、【フレイアの棟】と呼ばれる所は左にあるらしく、一行は左へと進んでいく。
「フレイアの棟...?フレイア専用の棟なんですか?」
「あとでフレイア自身のことも含めて全て説明する。」
「やだぁ、恥ずかしいなぁ、もう!」
大きな扉を前に一瞬立ち止まり、中に入る。
フレイアはスキップをしながら中に入るが、アレンはしばらく廊下の豪華さをながめてから中に入った。
「アレン・クラウ。入らぬのか?フレイア様がなぜ興味を持ったのか…私も知りたい。それも兼ねて王国騎士団について説明させていただきたい。」
この城に来てから、フレイアに出会ってからビリビリは収まらない。なにか特別なもの。それが知りたい。だからフレイアについて知りたい____。
「ああ、入るさ。そこまで躊躇してるわけじゃねぇって」
がじゃん!!!!! ...部屋の奥で奥で大きな物音がした。フレイアとアレッタは走って物音の方へ向かい、様子を除く。
「フレイア様、アレン・クラウ伏せて!」
「はいい!」
「なんだなんだ!?」
剣の降る音が聞こえた。魔法式が発動する音が聞こえた。
「おいおいルージェント王国騎士団さんよぉ。守護魔法切らしてんじゃねぇか。窓ぶちやぶれるなんてよォ」
「その紋章...。グイニア王国騎士団!フレイア様の力が必要か...。」
「アレッタ?なんなんだ、一体...。」
アレッタは瞬時に物陰に隠れたフレイアと見つめ合う...。
「いけますか、フレイア様」
「もちろんよ、アレッタ!」
今まで目にしたことの無い本物の[戦闘]とは。俺はこの時始めて見たんだ。[歌の力]というものを____。
蒼星の歌姫 乃愛 @noa_077
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