第三章

出来ること、やれることを精一杯やるだけです!

第一話 いざ、薬草採取へ!


 翌朝。明丸はキルシの図鑑とタオル、それから水を入れた水筒をリュックに入れて籠を片手に外へと出た。時刻は朝の五時。とてもよく晴れているが、日差しは弱く肌寒く感じる程だ。

 少し強めの風が、悪戯するように明丸の髪をぼさぼさにする。何度か撫で付けようとしたものの、無駄だと悟って潔く諦めた。


「よし、じゃあ行くか」


 昼間とは打って変わって、静かで落ち着いた街中を歩く。パン屋さんなどの商店は既に活気づいているようだが。いつもと違う景色に、ちょっとだけ落ち着かない。

 それにしても森の探索なんて、子供の時以来だ。アラサーでも大丈夫かな、足とかつらないかな。色々と不安はあるものの、ルサリィの森はよく人が出入りすることもあり案内板や道がそれなりに整備されているらしい。

 大丈夫だ、多分。


「……ありゃ? アキマルだにゃ!」

「へ?」

「うおっ! ホントだ、こんな時間に何してんだお前?」


 街の出口に差し掛かるところで、聞き覚えのある声が明丸を呼んだ。え、この声はまさか。思わず足を止めて辺りを見回していると、前方からシナモンとハルトが駆け寄ってきた。

 二人とも昨日と同じように武装をしている。どこかに行くのだろうか。


「わわ、おはよう二人とも。早いんだな」

「お、おはよう……っていうか、おれ達としてはアキマルにびっくりだぜ」

「そうにゃそうにゃ! びっくりしたにゃ!」

「そ、そんなに? そう言う二人は何してるんだ、こんな朝早くに」

「おれ達はこれから仕事だ。海岸沿いで魔物が増えてきたから、他の冒険者や傭兵と共同で駆除するんだ」

「ふっふっふー! ザコを狩るだけの簡単なお仕事にゃーん。報酬もまあまあ良いんだにゃ!」


 片足を軸にして、シナモンがくるくる回る。ううむ、聞く限りでは大変な仕事に思えるのだが、彼らにとってはそうでもないのだろうか。


「そういうアキマルはどこに行くにゃ? 隣街に行く馬車はまだ来にゃいにゃよ」

「いや、ちょっとルサリィの森まで行って来ようかと」

「森までって……一人でか?」

「うん。ユアさんは、お店に集中して欲しいし。大丈夫、お昼からはまたエルの庭でバイトだから、散歩がてら少し見てくるだけだよ。それじゃあ、二人も仕事頑張ってね!」

「あっ、アキマル!」


 二人が呼び止めるのも構わず、明丸は速足でその場を後にした。二人にも予定があるみたいだし、これ以上は迷惑をかけられない。

 全く知らない場所だし、本当なら付いてきて欲しいくらいには心細いのだけれど。不安は前を見ることで押さえ付けて。

 明丸はこの世界に来てから初めて、自らの足でエステレラから外へと出たのだった。



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