宇宙に他の知的生命体はいるか?


個人的な見解としては「いるか・いないか」で言えば「いる」と考えている。


言い方を変えれば「いておかしくない」もしくは「いる方が自然」と言ってもいいだろう。

むしろ、地球における生命、ひいては知的生命体(人類)の発生を『宇宙で唯一無二の特別な出来事』と考える方がどうかしている、と思う。


地球において生命が発生し、その中から知的生命体へと偶然にも進化した生物がいるのであれば、無限にも思える広がりを持つ宇宙のどこかで、似たような事象があちらこちらで起こっている(もしくは、起こっていた。あるいは、これから起きる)だろうと考える方が自然だ。


 『生命』の発生は偶然の産物であり、『進化』もまた偶然の積み重ねに過ぎない。


それが単なる偶然であっても、母数のボリュームが増えれば、「起こりうること」が「実際に起きる」可能性は飛躍的に高くなる。


よく科学コラムなどで比喩的に語られる「無限の可能性」の中では、無限の時間があれば、文字を理解していないサルがでたらめにタイプライターを打ち続けているだけでも、いつの日にか一文字一句の誤字脱字も無い完全なシェイクスピアの作品が書き上げられる可能性がありうる、という「シェイクスピアを打つサル」の話が有名だ。


(まあ、実際には宇宙は空間的にも時間的にも有限なので、いまの宇宙が熱死するまでのあいだに不死身のサル一匹がシェイクスピアを書き上げることは不可能だろうとは思うが。)


それはともかく、人類の感覚で言えば宇宙の「境目」や「終わり」を知覚することは不可能なのだから、感覚的には無限であるのと大差ない(無論、これは数学的な無限ではなく、文学的な意味での無限だ)


それほど莫大な試行錯誤が行われうる広大な宇宙と悠久の時の流れの中で、サル(適度な恒星系に所属する惑星)が無数にあれば、でたらめに打ったタイプライターが偶然にもシェイクスピアをたたき出すかのごとく、無数の化学反応からひょっこり生命が誕生することぐらい、ざらにあっても良さそうだ。



ただし、宇宙のどこかに知的生命体が「いる可能性がある」だろうということと、それと「出会えるかどうか」はまったく別の話だ。


知的生命体が存在する可能性を高めている「無限にも思える宇宙の広さ」は、逆に、知的生命体同士が遭遇するチャンスを「限りなくゼロに近いほど小さく」してしまう。

有り体に言えば宇宙は、何者か同士が偶然に出会うには広すぎ、また、広すぎるが故に、それぞれが「生きている時間」を共有している可能性も恐ろしく小さい。


人類が進化してそれなりに文化や社会を発達させ、「知的生命体」と威張れるようになって、まだほんの数万年だろう。

そして、ここから後の一万年程度さえ、人類が存続できるかどうか甚だ心許ない。


これは、生物種や文明が持つ生存時間、「種としての寿命」の問題だ。


数万年など、宇宙の基準で言えば瞬きするほど僅かな時間に過ぎず、その刹那の狭間に遠く離れた二つの生命体が知的と言えるレベルに進化し、滅びることも無く恒星間宇宙に進出する手段を会得し、偶然にもどこかで出会う...これまたシェイクスピアを書き上げるサル並に低い可能性かもしれない。


だから、こう考えよう。


「宇宙のどこかに地球人類以外の知的生命体は存在している。あるいは、これから生まれてくるだろう。そして、その存在達もまた、私たちと同じように『他の誰かに会いたい』と願うはずだ。そうした他者との対話を求めることこそが知的存在の宿命なのだ」と。


そう考えていれば、孤独は気にならない。

出会えなくても失望はしない。


いつか、どこかの種族同士がその奇跡の邂逅を果たすことを期待して。


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< 『進化』という単語は非常に良くない。進化という概念は、実際のところ『単なる微細な変化の積み重ね』に過ぎないのに、そこに目的や意図を感じてしまう人が出てきてしまうのは、『進化』という、いかにも何かに向けて進んでいる感じのする単語に、かなり責任があると思う。>


< 無限をイメージするのは難しい。『0.999…(小数点以下の9が無限に続く循環小数)』と『1』が数学的には完全に等しく、単に「記載方法が違うだけ」だと言われても、多くの人はピンとこない。

だが、『0.999…』の9の連なりが『1』に届く前に終わることは決してないのだから、それは『1』と同じである。>


< 滅び行く種族が、『誰かに私たちのことを記憶していて欲しい』と願う思いを表したSF作品としては、有名なTVシリーズ「Star Trek: The Next Generation」に「The Inner Light」という、非常にファンの多いエピソードがある。私もこの話は大好きで、実に秀逸なエピソードだと思う。>

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