路上での自立稼働ロボット
Level-5の自動運転ができる自動車というのは、平たく言えば路上の自律型ロボットである。
つまり自動運転が一般化した社会とは、交通システムとしてロボットが問題なく組み込まれている世界であり、その自律移動ロボットが四輪だろうと二足歩行だろうと、昆虫のような多脚型であろうと、単に駆動方式の機械的実装が違うに過ぎない。
車同士で加減速の特性や進路変更の挙動が極端に違うと事故原因になりやすいので限度はあるが、理屈としてはそういうことだ。
もちろん、各国ごとの道路交通法などの適用条件によって、それらの自立移動ロボットが(車道・歩道を問わず)公道を移動できるかどうかは違ってくるが、当然ながら自動運転というか、『公道上を自立動作で移動するロボット』の実現には、『周囲との関係性を認識し、それにあわせた挙動を行う』という、大変難しい動作が必要とされる。
「完全な自動運転は、向こう10年や20年では実現不可能」と考える人の多くは、この難しさを重く見ているということだろう。
しかし、これが解決できないようでは、車道だけでなく「雑踏の中を人にぶつからずに移動できるロボット」の実現も難しいということになるので、SF映画でよく見る「路上をロボットと人間が入り交じって歩いている」というステキな情景は見られなくなってしまう!
単純に考えても、もしロボットが自律動作で路上を移動できないとしたら、屋内や敷地内作業だけしかやらせられないし、そこまでは必ず「誰か」が運んであげなければいけないことになる。
せっかく、それなりと認識力と判断力を持たせて自立稼働できるロボットを作り上げても、外に出せないのでは魅力も市場価値も半減だ。
ロボットの周囲に立ち入り禁止エリアの枠線を表示して、決まった範囲だけで稼働させるのであれば、いまの産業ロボットと大差ない。
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とは言え、実際のところ「人混みの中を移動するロボット」の実現は、自動運転自動車の実現よりも遙かに難しい。
それは交通ルールのはっきりしている車道上での車の動きよりも、歩道での人間の動きの方が遙かにランダムで予測不能だからだ。
しかも速度が遅い分、密集度も高く、周囲の人々との間に確保できる隙間は僅かしかないし、個体ごとの速度差も、比率で言うと実は自動車同士よりも遙かにバラついてる。
歩道はルールやコントロールという観点から見ると、ほとんど無法地帯と言っていい。
それに、歩道のロボットには自動車にはない大きな問題がある。
こちらの方が重大なことかも知れないが、大抵のロボットは機械なので「固くて重たい」ということだ。
表面をクッションで覆えばいいという話ではなく(そういった対応も、もちろん必要だろうが)、構造そのものが動物に比べて固く、人などにぶつかった際にショックを吸収させるのが難しいのだ。
現在技術の延長で考える限り、金属のフレームに大量のアクチュエーター、CPU、バッテリーなど、仮にサイズ的には人間と同じ程度に収められたとしても、相当な重量物になりそうである。
ご存じの通り運動量というか、運動している物体が衝突した時のエネルギーは質量に比して大きくなるので、同じ速度で「歩いている」人間とロボットがすれ違いざまに肩をぶつけたら、恐らく人間の方が吹っ飛ばされるだろう。
これはもはや肩が触れあって「Oh sorry !」などと言っている場合ではなく、単なる交通事故である。(逆にロボット相手の「当たり屋」が出るかも知れないというのは、また別の話だ)
わざと「丈夫ではないロボット」を作るというのも一つの解決手段だが、重量物の運搬などはできなくなるし、耐久性も微妙かも知れない。
それに、機械の物理的な動作精度というのは「土台の重量」に頼る部分も多く、土台を軽くすればするほど精度は悪くなる。
がっしりしたフレームのロボットではなく、たわんで風を受け流す柳のようなフレームのロボットを作ったとしたら、仮に重量が同じだとしても関節などのアクチュエーターを滑らかに動かすことは難しいし、同じ動作でもエネルギーの消費率は悪化するはずだ。
「人に絶対にぶつからない」というのは目指すべきことではあるが、もしも完全さを求めるならば、ぶつかっても人間にダメージを与えないソフトな構造を実現するまで、自立稼働ロボットは家屋や敷地の外に出せない状態が続いてしまう。
それだったら「自転車レーン」の様に、歩道や車道に「人型ロボット専用レーン」でも設けてしまうのが、実は社会的コストとしては一番効率的だったりするのかもしれない。
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< 多脚式ロボットとタイヤ式ロボットが同じリズムで移動するのは難しいだろうか? 以前に、バイク仲間が何人かでツーリングに行くときに、2サイクルエンジン(いまは消滅してしまったが)と、4サイクルエンジンの車種が入り交じっていると非常に疲れると聞いたことがある。これは、両車のエンジン特性の違いから加減速のリズムが大きく違い、お互いに相手にあわせて集団走行しようとするとかなり気を遣うから、だそうだ。>
< ロボット自体は二足歩行でなくて構わないのだが、人に踏まれないように機敏に避け続ける「屋外型ルンバ」というのもちょっと鬱陶しい。>
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