システムの連携と連鎖と電車の遅延
最近、私の住んでいる地域の私鉄運行の乱れが激しい。
東京近郊に住んでいる人ならば様子を分かってもらえると思うが、<私鉄|地下鉄|私鉄>と、3つの異なる会社の路線が直通運転を行っているために、どこかでちょっとしたトラブルがあると、それが響いて最後の方は結構な遅延になってしまったりする。
ただ、そうは言っても直通運転は便利だ。
少々電車が遅れたり、たまに時間通りに来ないことがあったとしても、鬱陶しい乗り換えなしに目的地まで行ける利便性は捨てがたい。
『確実』か『便利』か、と問われると大抵の人は、自分の収入の増減に直結しないことに関しては、利便性を選ぶのでは無いかという気がする。
まあ、これは大概、どちらに慣れているか? という話でもある。
対象が確実に動いてくれることに慣れていれば、動かないと憤慨して『耐えられない!』とか思うかもしれないし、面倒が無いことに慣れていて、サービスが切り替わるごとにログイン操作を求められたら、『やってられるか!』 と思うだろう。
そして、現代人は大概のサービスに関して『確実かつ面倒がない』ことに慣れきっているので、そうでは無いサービスには鼻も引っかけない。
『繋がっているから乗り換えなしで目的地まで行けて便利』
というのを、ITネットワークサービスに置き換えて考えると、
『連携しているから認証なしでどのサービスも使えて便利』
というのなんかに近い。
さらに、システムが繋がっているからトラブルも連鎖し、最終的に結構な問題になったりすることがある、というのは実社会もネットワークも変わらない。
ただし、ITにおける『トラブルの連鎖』は、リアル社会とは比べものが無いほど危険だ。
例えば鉄道のようなリアルなサービスは、何かのトラブルが起きたとしても、その影響を与えられる範囲が物理的に限定されている。(電車が遅れて遅刻して会社を首になって収入が途絶えたぞどうしてくれる、とかいう『外的な連鎖反応』はここでは置いておく)
それに対してデジタルなサービスは、その影響が及ぶ範囲に限界が無い。
ちょっと極端ではあるが、どこかのサイトでユーザーのパスワードや個人情報が漏洩すると、シングルサインオンで連携していたすべてのサイトの認証情報を変えないといけなくなる、という話は(仮の)わかりやすい例だ。
繋がっていればいるほど、トラブルに巻き込まれたときの影響というかダメージは、計り知れなくなってくる。
『連鎖反応』という捉え方をすると、ついドミノ倒し的なイメージを思い浮かべてしまうが、現実はあんな単純なモノでは無く、ある場所で起きたトラブルやハッキングの影響が、モグラ叩きのように、いつ・どこで、ひょっこりと顔を出すかも分からない。
私鉄の直通運転に例えるなら、東京の地下鉄で起きた3分の発車遅れが、巡り巡って一週間後に、物理的にはまったく繋がっていないブエノスアイレスの地下鉄で列車遅延に起因する暴動を引き起こしかねないほど、ネットワーク社会の『連鎖』は見えない関係性で緊密に繋がっている。
そして、その原因を辿ることも影響の範囲を推定することも、非常に困難だ。
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< アルゼンチンの地下鉄を馬鹿にしているわけでは無く、ブエノスアイレスの地下鉄・B路線には丸ノ内線の中古車両が走っていたことからの連想である。>
< 繰り返しになるが、情報ネットワークにおいて単なる『障害』では無く、『攻撃』による被害拡大の連鎖を、ドミノ倒しなどと言うイージーなメタファーで語ることは、むしろ危険性を過小評価させてしまう危険性があると言っていいくらいだと思う。>
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