サイボーグのメランコリア


多かれ少なかれ誰でも似たようなモノだと思うのだが、体のあちらこちらに不調が起きると、いっそ人工部品に変えられないモノか? と考えてみたりする。


もちろん、入れ歯とかコンタクトレンズとかの範疇では無く、言い換えれば、現実の障がい者の方でも健常者と変わらずに、あるいはそれ以上に活動できるような生体パーツへの置き換えで、究極的には『攻殻機動隊』的な世界への期待だ。


あのストーリーの中では、主人公たちは特殊な政府組織に属していて、そのおかげで最先端の高級なパーツを自由に利用できる、と言う設定だったが、うーむ、そうすると逆に、特殊部隊員でも金持ちでも無い私たちは、保険適用で使える古い世代のパーツを使い続けるしか無いかもしれない。


そんなの当たり前だろ? 

今だって変わらないじゃないか? 


と言われたらその通りで、総入れ歯の代わりにインプラントをフルにやろうとすれば、ちょっとした高級車を口の中に買うのかというぐらいの金額になるだろうし、パラリンピックのトップ選手の方々が使用している装具も、これまたちょっとビックリするような値段だったりする。


20世紀のサイバーパンクSFで名を馳せたブルース・スターリングの著作「工作者シリーズ」の中に、全身を高性能な人工パーツで固めた殺し屋が、雇い主からの解雇とともに、手足を債権として回収されてしまうというシーンが描かれていたが、そういったことも、そろそろSFとは言えなくなってきている。


まあ、なんでもかんでも、やれ格差がどうした、貧富の差がどうした、なんて話に持って行きたくは無いのだが、攻殻機動隊的な世界では、身体パーツにおいても、自家用車における型落ち中古車と最新モデルのような棲み分けが生まれてくるだろう。


それで肉体のバージョンアップには新車買い換えのようにコストがかかる、というところまではいいのだが、今のIT業界の勢いだとサイボーグパーツまでサブスクリプション(定期購読)モデルになってしまいそうで怖い。


月額料金を払えなくなると、高性能な身体機能がロックされたり、制御ソフトウェアがグレードダウンされたりする世界。


いや、それとも広告付きの身体パーツになるのかな?


正規料金を払えない人、払いたくない人は、広告付きの身体パーツを使うことになる...文字通りの『歩く広告塔』?!


そんな未来もありえそうで、少し怖い。


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< 広告は昔からSFの格好のテーマで、主題から作中のギミックまで、様々な登場の仕方をしている。しかし、ほんの15年前には、『Googleの本質は広告会社だ』と言うと吃驚されたり、「こいつは何を言ってるんだ?」と呆れられたりしたのだ。>

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