睡眠障害といびき、そしてレーザー手術
ぼくは子どもの頃から、どうやらイビキをかいて寝るくせがあるらしい。
小さい頃から母親によく言われていたし、修学旅行や、友達同士でお泊まり会的なことをした時に友達に言われたりもしていたからある程度自覚はしているつもりでいた。
ここ1年ぐらいで、急に健康志向がバカみたいに高まったせいで、アプリもそれっぽいのが多くなった。
その中に、睡眠時に寝言を言ったり、動いたり、イビキをかいたりしたときにそれを自動で録音してくれるものがあるのだが、早速そのアプリをダウンロードし、寝る時に起動して寝てみた。
翌朝、データを確認してみたが、どうだろう。録音に失敗していた。雑音しか録音されておらず、なにか寝言を言っているのではないか、などと期待していたぼくは残念な気持ちで職場に出かけた。
その日の夜。
再びぼくはアプリをセットし、眠りについた。
翌朝。
また失敗していた。雑音しか録音されていない。
おかしい。なんだ?この砂嵐みたいな連続音は?
真実はすぐに判明した。
ずっと録音しっぱなしなのではなく、無音の時は録音を止めているのだった。
止まっているところは間隔を置かずに再生されるので、結果として雑音のような連続音が再生されていたのだ。
ぼくが寝ている時に、こんな怪獣みたいないびきをかいているのか?
と愕然とした。
と同時に怯えた。
でも、そんなこともしばらくすると忘れてしまっていた。
冬のある日。ぼくは東京のお父さんと勝手に呼んでいる職場のすげー年上の同僚の人と、泊りがけで新潟のスキー場に行った。
ぼくのいびきのあまりのうるささに、その人はぼくの鼻を押さえたという。
起きている時だけじゃなく、寝ている時もぼくは人に迷惑をかけているのか、迷惑かけ放題じゃないか、と本当に申し訳ない気持ちになった。
家に帰り、ウトウトしながらも自分のことについて珍しく考えた。
そういえば、会議の時にいびきをかいて居眠りした隙に、隣に座っていた同期の女性が、ぼくの会議資料に落書きをしていたりしたこともあった。
病院に行ってみた。
家に、無呼吸症候群の検査キットが送られてきた。指先に装着するセンサーや、鼻に装着するセンサーなど、思ったよりこじんまりとしたマシンだ。
ぼくのイメージでは、病院の特殊な部屋に泊まって、ヘンテコな装置をつけられて寝るみたいな感じだったが、自宅で検査できるのには文明の確実な進化を感じた。
新潟の検査センターに着払いで送ったらあとは報告を待つだけ。
連絡があって、再びクリニックを訪れた。
―――ぼくは、睡眠障害だった。
医者「無呼吸の時間がちょっとありますね」
わかな「・・・え?!」
医者「そんな長い時間じゃないですけどね」
わかな「苦しくないの?」
医者「寝てますからね」
わかな「死んじゃうじゃん」
医者「あんまり長いとね」
こんなやり取りが医者との間で交わされたが、当たり前のようになんの解決にもならなかった。
ぼくは考えた末、新宿にあるという、レーザー照射技術を用いた手術を行うクリニックの受診を決心した。
そこでは、カウンセリングと称して、なんかいろいろ聞かれたり、金額の説明とか、手術に要する時間、どんなことをするかなどの説明などがなされた。
カウンセラーという大阪院から最近転属されたばかりという女性スタッフと、このレーザー照射手術の技術が優れていて人気と実力を兼ね備えている女医さんが対応した。
ざっくり言うと、喉のあたりが全体的に腫れていて、ブヨブヨしていて柔らかく、薄いから寝ていて脱力している時に呼吸するとその時に震動していびきになるらしい。
だから、そのブヨブヨしたのをレーザー照射によって「灼く」ことによって引き締め、呼気、吸気時に震動しにくいようにするという。
なんと、その無料カウンセリング当日に手術可能だというので、物は試しだと思い、手術を受けてみることにした。
まず、「イソジンうがい薬」みたいなやつでうがいをする。
麻酔もなんにもしない。
いきなり手術室に連れていかれて、仰向けになれと言われ、言われるがままに体を動かす。
口を開けたり閉めたり、舌を上下左右に動かしたりしているうち、レーザーが照射されているらしい。
らしいというのは、よくわからないからだ。少しあったかいような感じがするが、これだ!!というような感覚はない。
終わってみて、実際の手術時間は15分ぐらいなのだが、体感的にはものすごく長く感じられた。
術後、稀に痛みが出るということで、ロキソニンが処方され、ぼくは家に帰った。
手術の料金は10万円だった。
一年間レーザー手術受け放題だと30万円だったか、すごくざっくりとした価格だった気がする。
手術の効果はというと、なんとなくではあるが、いびきをかかなくなったような気がする。
黙って座っていても物凄い睡魔を襲われることも少なくなったし、朝起きて喉がガラガラして痛いこともあまりなくなった。
自分のいびきで目が覚めることも今のところない。
10万円のレーザー照射手術が安いか高いかは個人の感覚によるところが大きいと思うが、ぼくはやってみてよかったと思う。
死ぬような手術でもないし、万が一失敗してもたぶんだいじょぶ。
油断すんなよ、人生は二重底だぞ! わかな @strawberrycreamsoda
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