恋の火花は瞬く間に

伏した瞼や睫毛のラインがふとした瞬間に美しかったり、

横を向いた表情が艶やかに見える瞬間、

ただ立っている、背中の様が絵のように見える時。

そんな一瞬の人の姿に恋をする。

誰ではない、掴みようもないその瞬間に。

出会えた時の電気が走るような悦びと、その対象に触れられない悲しみが、私の胸を埋め尽くす。

手にできないものに恋をする、この不毛な趣味はいつからだろう。

いつか抱きしめられるなにかに甘くときめきたいけど、

瞬間の恋の儚さとその味を知ってしまうと、もう。

あてのない旅に生涯をささげる旅人のように、

不意に心を満たされる事故のような出会いをいつだって期待して歩き回って待っている。

ねえでもいつか、指を指し伸ばしたくなる瞬間が訪れたら。

その時は、神さま。

ほんの少しだけ時を、声をかける覚悟を決めるための時を、止めてください。