第6話

 エンブレムを作ろうとしたのはいいものの...

「いや...ちょ...これは硬過ぎ//」

そう。

硬過ぎる。

私が持ってきた、のこぎりが刃こぼれしそうだった。


これはまずい。

私は、最悪のパターンを考えてしまった。

それは

「「黒い」森が広すぎて、途中で野宿することになったら、火が起こせなくて...」

あ、こうなったらおしまいですわ。


しかし、私は諦めない女だった。

「ゲンナァ―イ、かもぉーん!」

そう、最終兵器「ゲンナイ」!

「全く、食休みの途中なのに...だるい人だなァ。しゃーない行ってやるか」

と、言いたげ。

じっとこちらを見てくる。

ま、そんなの気にしてたら「負け」だと思っているんで。


ゲンナイの大きな牙の間に、枝を挟む。

「はいッ!噛んで~!」

パキッ。

もう、薪割りになっていた。

こっちの方がこれから役に立つからな。

損はないから、いいんだけど。


それから2日間、その薪を使うことはなかったが。



 バッサバッサ

私は、今、人生最大に焦っているかもしれない。

この、焦りがゲンナイに伝染しなければいいが。


 それは、昨日、私が半裸で寝袋に入ろうとした時の事だった。

「ポッポー」

と、鳩の鳴き声のような音が聞こえた。

ま、森の近くだし、巣でもあるのだろう。

そう思い、翌日に備えてぐっすり寝ようとしたのだが...

「ポッポー」「ポッポー」「ポッポー」

なんかどんどん増えてってるよね?

私は、外が気になり、「家」の外に出てみた。


「あ、これは...アカンやつやない?」


そこにいたのは...

騎士隊の緊急速達伝書鳩きんきゅうそくたつでんしょばとだった。

その紅い翼は、まだ少しハタハタと動いていた。

そして、緊急速達伝書鳩が支給されるのは、遠征先の部隊のみ。

この時期に、北へ遠征に出ているのは、これから交代する部隊のみ。

これが意味することとは、ただ1つ。


私は、眠りにつこうとしていた思考を、叩き起こす。

それは、

「遠征先の部隊に緊急事態が起きている」

と、いうことであろう。


 私自身、この紅い鳩を実際に見たことはない。

座学の時、資料を少し見たことがあるくらいだ。

それも

「こいつが飛んでくるときは、犠牲が出ている」

という、恐ろしい言葉と共に。


 そんな、「災いの伝書鳩」とでも呼ぶべき鳩が目の前にいるのだ。

私は、少しの間動けなくなった。


もう一度、叩き起こした思考から導き出された答えを確認する。


私は、ズサァと鳩の前に滑り込むと、背中に括り付けられていた手紙をサッと取る。

何故か、便箋びんせんだけになっていた。

しかし、こんな緊急事態なのだ。

そんな事をいちいち気にしている暇はない。

私は、何枚かの便箋にざっと目を通す。


 どうやら、私より階級が1つ上の者が書いたようだ。

その内容とは...


「穢れた民族との大戦、ここに開戦を記す」

と。

その下に穢れた民族特有の崩れた字で一行、書いてあった。

私には、読めないが曰く民族の長の名前らしい。



「これは、まずい」

私は、そう、呟いていた。




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