第5話

 さっき、あれほどゲンナイを起こさないように。

疲れてるだろうから、ぐっすり寝て全快してもらおうと思っていたが...

「...起きなさすぎだろぉ!」

流石にこんなに寝られると、腹が立ってくる。

いっそのこと、叩き起こしてしまおうかと思ったが...

「ぐぁ」

と、聞こえたかと思うと、ゲンナイが翼をバサバサしていた。

「あ、おそよう、ゲンナイ。寝すぎ」

ゲンナイは、

「昨日あんなに飛んだからいいじゃーん」

と言いたげな顔。


なにはともあれ。

これで、ゲンナイも起きたことだし、遠出が出来る。


ゲンナイに朝ご飯をあげている間、私は今日何をしようか考えていた。

「黒い」森は、探索しようにも、広すぎて危なそうだ。

もう少し、ここの環境に慣れてからにしたい。

が、そんなにのんびりもしていられない。

遠征は、今任務をこなしている騎士の休暇の間、下等生物らの侵攻を防ぐことだった。

早く休暇に入らせてあげたいので、早めに到着しておきたいのだ。


...結構やさしいんだぞッ!


という訳で、ここにいれるのは精々3日くらい。

まぁ、興味がなくなったら、すぐにでも出発してやるが。


ゲンナイの牙が、朝ごはんを置いた石と当たる音が聞こえた。

相変わらず、食べるの速いなぁ。

そう、ゲンナイは、出会った時から食べるのが速かった。


昔、ゲンナイと初めて会った時。

ゲンナイの訓練師からこんな事を言われたっけな。

「そいやぁなぁ、こいつぁ、飯を食べるのが速いんだ。」

「は、はぁ。何か支障でもあるんでしょうか?」

「だから言っとるんだろ。はっはっは。まあ、気を付ければ何の問題もないんだが...」

「は、はい!」

「食べた後すぐに、動かしたりするんじゃないぞ。巨大な胃から食ったもん全部出てくるからな」

私は、ドラゴン特有の巨大な胃から、ぐちゃぐちゃの「アレ」が滝のように流れて出てくる光景を想像してしまい、私も吐き気を催した。


と、いう事があったからなぁ。

さて、食休みとするか。

一応言っておくか。

「ゲンナーイ、ゆっくり食べるんだよー」

すると

「もう食べ終わってるよー」

と言いたげに、「ガジガジ」という音が聞こえた。

「やっぱり、遅かったか...」


そんなゲンナイを横目に、私は、「黒い」森の木の枝を使い、王立騎士のエンブレムを作る。

暇だから。


「王立騎士、遠征のとき暇を持て余してる、説」

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