Warning!

その藍色は、夜空を仰ぐ

 天体。

 空を見上げれば、無数の星々が瞬く夜空。


 何万光年も昔から、星の輝きは変わらない。

 僅かな明滅に差があれど、その本質だけは変わらない。


 昔から、人は様々な想いを星に馳せてきた。

 星と星を繋いで、様々な物語を紡いできた。


 それはとっても素敵なことだと、彼女は思う。

 同時に――その物語が、「当てつけ」の御伽噺であることも知っている。


 


 


 


 ――


「……」


 彼女の藍色の瞳は、全てを見透かしたように揺蕩っている。

 空の蒼にも、海の青にも、染まず漂う絶対的な藍色を湛えて。

 まるで――宝石のような、人間離れした美しい瞳。


 それは、人生のどんな大切なものを投げ打ってさえ、手に入れたくなるような真実の色。


 一度でもその色を知ってしまえば――もう、他の真実を知ることはない。


 故に――魔眼。

  魔眼にして、邪眼。

   邪眼にして、絶眼。

    絶眼にして、死眼。


 「……魔王生誕まで、あと少し」


 星に向かって呟く彼女の瞳には、全てを見透かしたような微笑みが、薄氷のように張り付いていた。


 



 彼女の名前は、龍宮院 りゅうぐういん沙杯夜さはいや


 弱冠14歳にして十字軍の総司令を務め上げ、この世の全てを知り尽くし、魔眼にして邪眼にして絶眼にして死眼という二つ名で恐れられる、唾棄された藍色。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る