Warning!
喜色混じりにゲタは鳴る
吸血鬼とただの人間が死闘を繰り広げた小高い丘から、数キロほど離れた場所。
「ああ。そうだ。吸血鬼の存在が消えた。つまり死んだっつーことだな。面白くなってきやがった……おいメイデン、早急にヘリを寄越せ。早急にだぜ――あ? 何? いや、お前は要らねぇよ。着いてくんな、大人しくしてろ。来たら殺すからな俺だけで十分だ、分かったかボケカスアホ無能副隊長」
電話越しに捲し立てると、男は忌々しそうに受話器を置く。
その男は、どこからどう見ても不審者だった。
ひょっとこ面に、黒いスーツ。手にはオモチャじみた鉄砲を持ち、足元はゲタ。――全身、てんでバラバラだ。
ひょうきんなんて域は、とっくに超えている。
ふざけているなんてレベルでは、とても図りきれない。
彼の意味不明さは、そんな次元をとっくに突き抜けて――不気味さすら醸し出しているほどだった。
「ったく。普段は従順で扱いやすいが、吸血鬼が絡むとすぐこれだ。うちの副隊長様は血気盛んでいけねぇぜ」
もっと俺のように冷静でスマートでなくちゃな――なんて独り言を残しながら、男は電話ボックスから去っていく。
からん、ころん。軽快にゲタを鳴らしながら、彼は歩く。
「それにしても――どんな奴だろうな。吸血鬼を殺した野郎ってのは」
ちったぁ骨のある奴ならいいんだが、と。
男は、ひょっとこ面越しに呟く。
心なしか、その声にはいくらかの喜色が混じっているようだった。
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