第一記 「人もおし…」

 虫の母屋おもやの庭で鳴き響いている。この家の主は名を`蘭遊丸らんゆうまる´といった。

彼は一人身の陰陽師おんみょうじで名はあらとあらゆる地域へと広がっていた。その蘭遊丸は母屋の一番大きな柱に横たわり、鮎を酒のさかなにしさかずきを一人でわしている。

蘭遊丸の姿はまるで可憐な水龍のようで、黒々とした長い髪の毛に、澄んだ黒い瞳。顔立ちも凄くととのっている、美形か美形でないかと聞かれたら誰しも美形だと答えるだろう。白拍子しらびょうしを身にまとっているため、更に黒髪が美しく際立つ。蘭遊丸はゆっくりと立ち上がろうとしたその時、

“ドサッ...”鈍い音が微かだが蘭遊丸には聞こえた。それは馬屋の方からのようで馬達の

高鳴りが虫の音を掻き消し馬の高鳴りだけが夜の闇の静けさに溶け込んでいった。

蘭遊丸は高鳴りの聞こえた馬屋へと足を運んだ。


「うっ...ここは?」ようは目を覚まし辺りを見渡した。黒々ととしたものが動いているのに気づく。一瞬キラリとなにかが光った、それは馬の目だった。

「うま???」楊は馬達に(不思議だ)と思って見つめたが、馬達も同様に見つめ返していた。楊は何度か辺りを見渡すと、辺りの風景が違うことに薄々気づき始めた。

『おぃ、お前。』楊はビックリし、すぐさま声のする方に振り返ると、そこには美しく

黒髪が似合う白拍子姿の美青年が立っていた。楊がボーッとしていて気づくと蘭遊丸は

楊をお姫様だっこをしており、楊は顔を赤くし蘭遊丸の手から転げ落ちた、

「なっなにするんですか!?」あわてふためく楊に蘭遊丸は手を差し伸べいった。

『お前が怪我しているのが心配だっただけだ。』心配そうな顔に楊は又もやボーッとして

しまい楊は蘭遊丸の所に泊めてもらうことになったのである。

『今日は月も美しい。』蘭遊丸はそう呟いたのだった。

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恋した私と花の色 嫁小豆 @ReiyaLove

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