お金がない!

1/26 inカトマンズ 


 早朝に目を覚ます。いつもは車やバイクの音、人の声等の街の音が聞こえるが、今日の朝はシーンと静まりかえっている。朝の一服を入れてCDをかけて本を読む。朝の一服は最高だ。


 明日はポカラに出発するので汚れて、荒れた部屋を片付けて荷物をまとめる。動こうと思うと自動的に体は動くものだ。今の自分の心を映し出したような汚い部屋は綺麗になる。たったの3ヶ月の旅のおかげで片付けるのは慣れてきた。なんてったって片付けてくれる人はいない。


 昼前になり、暇なので外に出る。どの店も閉まっているが、人通りは前回のカルフィーよりも多い。CD屋やレストラン等の店は開いている。今日は食べるところに苦労しないかも。現在の所持金は300ルピーとあまりない。もちろん両替所は開いていない。なにげなくレストランに入ると、敷地内のパン屋はちゃっかり営業している。なんだ! 大量のパンを買い、部屋に戻る。


 パンを大量に買ったおかげで明日のバスのチケットを買うお金がないや。パンを食べながらひたすら本を読む。大量の本は重たいので少しでも減らしていかないと。


 一服しては宿のパソコンを使い、ウィキペディアでプロ野球選手を調べたり、本を読んだりして暇つぶしする。カルフィーって厄介だな。けど、日本だったら会社は休みかもしれない。昼寝をしてジャンベを叩く。チベットに入ってからほとんど叩いていないので、すっかり腕は鈍っている。


 夜になり外に出る。両替所を探し回るがどこも閉まっている。えーー、まじで! 本屋は開いているのでバスのチケットは大丈夫。飯も大丈夫。ポカラにいる間に試すつもりだった“×”とオピュームを買うお金がない。顔見知りのプッシャー達に両替できる場所を探してもらうが、やはりどこも閉まっている。両替の苦労はジョンディエンで思い知ったのに。


 両替はあきらめて本を売ることにする。もう少し読みたかった石丸元璋も少ししか読んでいない坂口安吾も手放す。手にしたお金でバスチケットを買い、韓国料理を食べることにする。


 韓国の国旗をみてプルコギが懐かしくなる。綺麗な建物の韓国レストランは、店内は広々として団体客が楽しそうに食事をしている。韓国人かと思いきや、みんな日本語を話している。なぜ日本人? 特に深い意味はないのかもしれないが、どんな理由でこの店に決めたのだろう。団体旅行者っぽい中年のおじちゃんとおばちゃん達の会話を聞いているとトリップさせられる。ここは日本ですか? とてもストライキー中のネパールとは思えない。


 一人のおっちゃんが“町田”という言葉を発して敏感になってしまう。本当にどこに行っても日本人はいるもんだな。会話を聞いていると丁寧に話すみなさんの言葉には感心してしまう。日本語って複雑だけど、洗練された綺麗な言語だな。言い回しはたくさんあり、表現は豊かで日本人でよかったとしみじみと思う。言語には国民性が良く表れる。


 運ばれてきたチャプチェご飯を食べながら色々考えてしまう。雀荘のバイトで韓国料理を毎日食べた。安楽亭のキッチンでちょっとした韓国料理を知った。きわめつけは万博で働いていた韓国人会社! なにかと韓国に縁がある自分、何で韓国料理を食べたくなったのかわかった気がする。


 腹いっぱいになり、宿に戻る前にずっと狙っていたパン屋の半額セールに行き、大量のパンを買う。8時以降は全品半額とすばらしい。これが腹を痛める原因になる。米は大好きだけど、パンも大好きだ。というか嫌いな食べ物がほとんどない。唯一あまり食べたいと思わないのが酒粕入りのわさびづけだ。


 綺麗に片付いた部屋に戻り、一服して眠る。


 明日はポカラだ。ビザが出来るまでの暇つぶし。うわさはよく聞くけど、どんなところだろう? 大量の荷物を収納したリュックを見ると、移動がひさびさな気がする。

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